# メタバースに必要な7種類の材料 **Published by:** [RIC / Crypto](https://paragraph.com/@ric-crypto/) **Published on:** 2022-05-06 **URL:** https://paragraph.com/@ric-crypto/7 ## Content 初めまして、大学を休学中のRICです。卒業の目処はたっていません。 Web3の話をMediumでするのはガリガリなのに筋トレを語るヤツみたいで情けないのでMirrorに移行しました。 Web3同様世間のバズワードとなり、雨後の筍のごとく出現し続けている「メタバース」ですが、そのほとんどは中央集権型のプロジェクトであり、競合他社とユーザー数や映像技術、トークンインセンティブなどで競い合っています。 Web3と同じ文脈でメタバースが語られる様子を稀に見かけますが、そういった誤解に対するモヤモヤした気持ちを美しく整理してくれ、代弁してくれた記事を a16z が投稿していたので、原文を日本語に意訳し、以下で共有させていただきます。 原文はこちら なお、この記事は 新興メタバースプロジェクトの是非を見極める指針を求めている方 a16zが思い描くメタバースの将来像を知りたい方 STEPNという単語にそろそろ飽きてきた方 にお勧めです。 もし参考にしていただけましたら、こちらから拡散していただけると幸いです。 以下本文――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「メタバース」という単語は、90年代に誕生して以来、コロナ禍による経済活動のオンライン化、そしてFacebookがMetaに社名を変更したことによりさらに話題になっています。 メタバースは単なるマーケティング用語に過ぎないのでしょうか。メタバースと単なる仮想世界(バーチャルワールド)との間の線引きはどうなっているのでしょうか。 私たちa16zは、メタバースをどのように捉え、メタバースとWeb3.0がどのように関わっているのかを考察しました。 a16z Crypto メタバースを一文に纏めると、「インターネットをより社会的に、包括的に、経済的に洗練されるよう変革させるもの」といえるでしょう。これを実現する方法として、大まかに言えば、2つの競合する観点があります。ひとつは分散型で、財産権と改善改革が認められ、相互運用可能性を持ち、パーミッションレスであり、そしてそれを構築し維持するコミュニティによって完全に所有されるものです。もうひとつの観点は、今日多くの人が知っているような中央集権的で、閉鎖的で、企業の気まぐれに左右され、その創設者や開発者、そしてユーザー問わず定期的に経済的負担を強いるようなものです。 両者を比較する上で重要な対比は、開放的か閉鎖的か(Open VS Closed)であり、両者の違いは以下のように説明できます。 "オープンな”メタバースは分散型であり、ユーザーがアイデンティティを完全に保有でき、活動インセンティブを調整し、(プラットフォームではなく)ユーザーに価値が還元されることを保証します。また、コードの透明性が高くパーミッションレスであり、コンポーザブル(他の人がメタバース内やメタバース間で自由に構築できる)であることなども条件となります。 完全なメタバース(クローズドではなくオープンなもの)を実現するためには、究極の形態に内在する7つの要素が必須となります。私たちa16zでは、これらがメタバースと呼ばれるための最低条件を満たすためものだと考えています。 私たちのゴールは、何が真のメタバースで、何が真のメタバースでないかについて、デベロッパーやユーザーのために情報のノイズを晴らし、黎明期にある数々のメタバース事業を評価するためのフレームワーク、つまり完全なメタバースを料理するための必須の材料を提供することです。 材料その1. 分散化 (Decentralization) 分散化は、真のメタバースの根幹にある原理であり、後に続く特性の多くはこの主となる概念に依存するか、またはそこから派生するものです。 分散化とは、単一の企業によって所有・運営されていないこと、また少数の中心人物の言いなりになっていないことを意味します。中央集権的なプラットフォームは、ユーザーや開発者を惹きつけるために友好的かつ協力的にスタートする傾向がありますが、いったん成長が鈍化すると、ユーザー同士の競争を促して利益を抜き取り、結果的にゼロサムゲームになってしまいます。こういった権力を持つ運営陣は、しばしばユーザーの権利侵害やプラットフォームの解体に関与し、囲い込まれた経済の中で一方的に搾取を行います。一方、分散型システムは、ステークホルダー間の所有権分配がより公平で、侵害が少なく、多様性に富んでいます。 分散化は重要です。そうでなければ、誰もがいつでも「ラグられる」状態にあるわけです。そのようなリスクのある状況下では、開発者はプラットフォーム上で構築することを思いとどまり、イノベーションは妨げられます。中央集権的なプラットフォームは、ブロックチェーンが扱うスマートコントラクトのようにコードで制御された強力な契約を結べないため、リーダーや運営の気まぐれや欲でルールが意味をなさなくなると、初期の約束が取り消されたり変更されたりする可能性があるのです。このような悪用からを防止し、メタバースを安全にする最も強力な方法は、プラットフォームの分散化しかありません。 材料その2. 所有権 (Property Rights) 現在、大成功しているゲームタイトルのほとんどは、「スキン」や「特殊絵文字」などのゲーム内アイテムやその他のデジタルグッズを販売することで収益を得ています。しかし、現在ゲーム内アイテムを購入している(と思い込んでいる)ユーザーは、実際にアイテムを購入しているのではなく、レンタルしているにすぎません。運営が別のゲームに移ってしまったり、一方的にサービスを終了させたり、ルールを変えたりすると、プレイヤーはすぐに購入した(と思い込んでいる)もののを失ってしまいます。 人々はWeb2の中央集権的なサービスからレンタルすることに慣れてしまったので、実際に「モノを所有する」という感覚、つまり自由に販売、取引したり、別の場所に持っていったりできるデジタルなモノを持つ感覚に違和感を抱きがちです。しかし、デジタルの世界は物理的な世界と同じ論理に従うべきでしょう。買った時点で、完全な所有権を手にするべきです。現実世界で裁判所がこの権利を支持するように、オンラインでもスマートコントラクトがこの権利を主張し保全すべきなのです。しかし、暗号技術、ブロックチェーン技術、そしてNFTのような技術革新が起きるまでは、真のデジタル財産権は実現できませんでした。 簡単に言えば、メタバース内ではデジタル世界での小作人は地主に昇格できるのです。 材料その3.主権的アイデンティティ (Self-sovereign Identity) アイデンティティは所有権と密接な関係にあります。”自己”を所有していなければ、何も所有することはできません。現実世界と同様、人々のアイデンティティは、少数の中央集権型アイデンティティ・プロバイダーに完全に依存することなく、メタバース全体で持続可能でなければなりません。 認証とは、その人が誰であるか、何にアクセスできるか、どのような情報を共有しているかを証明することです。現代のインターネットは、ソーシャルログインやシングルサインオン(SSO)のような一般的なワンクリック・ログイン方式で、自分の代わりの仲介サービスに認証を依頼することが殆どです。MetaやGoogleのような巨大テック・プラットフォームは、この方法で効率よくデータを収集しています。人々のネット上の行動を監視し、より訴えかける広告を提供するモデルを開発しています。さらに、これらのプラットフォームは完全にコントロールされているため、認証プロセスを革新するためには、プラットフォームの背後にある企業の誠実さを信じるしかない、性善説に頼らなければいけないわけです。 web3の中核となる暗号技術は、上記の仲介サービスに依存することなく人々の認証を可能にします。結果、人々は自己のアイデンティティを直接、あるいは自分で選んだサービスの助けを借りて管理することができます。MetamaskやPhantomのようなウォレットは、人々が自分自身を確認する方法を提供しています。EIP-4361 (Sign-in with Ethereum) や ENS (Ethereum Name Service) などの規格により、プロジェクトはオープンソースのプロトコル中心の連携を可能にし、より豊かで安全かつ継続的に進化するデジタルアイデンティティの概念に独自の方法で貢献できるようになるのです。 材料その4.コンポーザビリティ (Composability) コンポーザビリティとは、システム設計の原則の一つで、ここではレゴブロックのようにソフトウェアの部品を組み合わせて使うことができる特性を指します。どのソフトウェアコンポーネントも一度構築するだけで、その後は簡単に再利用することができます。これは、金融における複利の概念やコンピューターにおけるムーアの法則と類似しており、指数関数的に成長するポテンシャルを秘めている、知られている中で最も強力な経済推進力の一種です。 コンポーザビリティ(相互運用性と密接に関連する概念)を特徴とするメタバースは、基盤として高品質でオープンな技術規格を提供する必要があります。MinecraftやRobloxのようなゲームでは、システムが提供する基本的な部品から創作物や新しい体験を構築することができますが、その環境の外に移動したり内部の仕組みを変更したりすることは困難です。決済大手Stripeや通信サービスTwilioのような埋め込み型サービスを提供する企業は、ウェブサイトやアプリをまたがって機能しますが、外部の開発者ががコードを変更したり改変したりすることはできず、完全なブラックボックスとなっています。 コンポーザビリティ及びインターオペラビリティは究極には、広範囲のソフトウェアエコシステムにわたってパーミッションレスに展開できるという状態になります。分散型金融(DeFi)は、この究極形態の一例です。誰もが既存のコードを取り込み、再利用し、変更し、応用することができます。それだけでなく、開発者は、CompoundのレンディングプロトコルやUniswapのAMMなどの生きたプログラムを、EVM上に並べて自由に構築することができます。財産権、アイデンティティ、所有権といった強力な新要素を組み合わせることで、開発者はまったく新しい体験を創造することができるのです。 材料その5.オープンソース (Openness/Open Source) 真のコンポーザビリティは、オープンソースでないと不可能です。オープンソースとは、コードを自由に利用できるようにし、自由に再配布や変更ができるようにすることです。程度や種類に関係なく、原則としてのオープンソースはメタバースの開発にとって非常に重要であるため、上記のコンポーザビリティと重複する概念であるにもかかわらず、独立した材料として分類しています。 では、メタバースの文脈におけるオープンソースの意味とは何でしょうか。最高のプログラマーやクリエイターが革新的であるためには、システムを完全に操作できることが必要です。オープンソース、いわば開放性は、これを保証できます。コードベース、アルゴリズム、マーケットプレイス、そしてプロトコルが透明で公共に解き放たれているとき、デベロッパーはより洗練されたビジョンと野心を完全に追求でき、信頼できる環境を構築できるようになります。 オープンであることで、より安全なソフトウェア開発につながり、関係者が経済状態を認識でき、情報の非対称性を排除できます。これらの特性により、ユーザーが協調できるような、より公正で公平なシステムを構築することができます。また、ビジネスにおける長年のプリンシパル・エージェント問題と情報の非対称性を調整するために数十年前に作られた、時代遅れの米国証券法も不要になる可能性があります。 web3におけるコンポーザビリティの底力は、オープンソースのエートスによるところが大きいと言えます。 材料その6. コミュニティ主体 (Community Ownership) メタバースでは、すべての利害関係者が、その関与量に比例して、システムのガバナンスについて発言権を持つべきです。大手IT企業のプロダクト・マネージャーたちが下した指令に従順になっている場合ではありません。もし、このバーチャルワールドを誰かが所有し、支配できてしまうのであれば、ディズニーワールドのように、ある種の現実逃避はできても、その真の可能性を発揮することはできないでしょう。 コミュニティ主体では、ネットワーク参加者(開発者、クリエイター、投資家、ユーザー)が協力し、共通の利益を得るために努力するためのパズルピースとなります。この奇跡的な連携は、以前は扱いにくかったり、暗号やブロックチェーンの出現なしには不可能でしたが、ネットワークの固有資産であるガバナンストークンの所有権を通じて組織化されています。 分散化によって生み出される技術的な進歩以上に、コミュニティが所有する空間の哲学的な意味合いは、真のメタバースの成功に欠かせないものです。Web3全体において、分散型自律組織(DAO)の参加者はこの原則を強く認識しています。彼らは、企業構造の形骸化した風習を避け、より柔軟で、多様な、民主主義の実験を行っているのです。DAOによって、単一の団体ではなく、ユーザーによって統治され、構築され、推進されるコミュニティが実現可能となりました。 材料その7.社会への浸透 (Social Immersion) 大手ハイテク企業は、高性能な仮想現実や拡張現実(VR/AR)ハードウェアが、メタバースに不可欠な要素であると大衆に刷り込ませています。しかし、このようなハイテク端末はトロイの木馬のようなものです。企業はこの端末のサプライヤーとなりシェアを独占し、それによって人々のメタバース体験の仲介サービスになるための手段だと考えているのです。 メタバースはVR/ARである必要は一切ありません。メタバースが存在するために必要なのは、広い意味での社会的没入感です。ハードウェアよりも重要なのは、メタバースがどのような活動を可能にするかということです。DiscordやTwitter Spaces、Clubhouseのように、遠隔で一緒に遊んだり、仕事をしたり、友人と交流したり、楽しい時間を過ごすことができることの方がよっぽど重要です。 新型コロナウイルスは、Zoomなどのリモート会議やオンラインミーティングの利用が急増しているように、電子メールなどの従来のテキストベースのコミュニケーションプラットフォームを超えた、より没入感のある体験の必要性を明白にしました。この流れが加速すれば、先述の経済的要素(所有権、主権的アイデンティティ、コミュニティー主体)により、メタバース内で人々は生計を立て、ビジネスに従事し、報酬を獲得することも可能になるでしょう。サラリーマンの職場では、Slackなどのツールを使って共同作業を行っていますが、そのような伝統的な企業の外では、DAOのボトムアップの組織運動で、DiscordやTelegramが普及しています。 メタバースを見るための様式とそれに必要な機械とメタバース自体は何の関係もありません。「メタバースに端末が必要」というのはAR/VR端末の製造業者によって都合よく塗り替えられた社会的常識にすぎません。 *** 多くの企業がメタバースのさまざまな部分を構築し始めていますが、もし上記の材料のいずれかが欠けている場合、それは完全なメタバースとしてカウントされないと、私たちa16zは考えています。上記のラインナップでも明らかなように、メタバースはWeb3テクノロジーの基本的な基盤なしには存在し得ないと、私たちは考えています。 開放性と分散化の二輪上にメタバース全体が乗っかっています。所有権は分散化に依存しており、強力な営利企業の影響力にもかかわらず、存続しなければなりません。コミュニティ主体のあり方は、プラットフォームの一方的な支配を防ぎます。このアプローチは、分散化とコンポーザビリティ(インターオペラビリティの延長線上にある密接に関連した特性)に役立つオープンなスタンダードを強化するものです。 理想的なメタバースの構築は、これから徐々に実現されていくでしょう。レディ・プレイヤー・ワン」に出てくるIOIを介した一見桃源郷のようなディストピアにならないよう、解決すべき問題は山積みです。しかし、私たちがこの7つの条件を忠実に守れば、そのような事態は免れられるはずです。 真のメタバースがついに登場するとすれば、分散化を核とした7つの原則を完全に体現したものになっているでしょう。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― いかがだったでしょうか。 いつぞやのTLで見かけたツイートで個人的に好きだったのが、 「各々のプロジェクトが独自のメタバース版渋谷を作っているのでは完成からは程遠い。渋谷を乱立させるのではなく、それぞれが同じ規格で新宿、六本木、渋谷を作り、自由に行き来できるようになった時が真のメタバース時代だ」 というものです。ツイートした本人は是非お声掛けください、 最後になりますが、こちらの記事が少しでも参考になりましたらツイートにいいね、RTを頂けると嬉しいです。 お読みいただきありがとうございました。 RIC ## Publication Information - [RIC / Crypto](https://paragraph.com/@ric-crypto/): Publication homepage - [All Posts](https://paragraph.com/@ric-crypto/): More posts from this publication - [RSS Feed](https://api.paragraph.com/blogs/rss/@ric-crypto): Subscribe to updates - [Twitter](https://twitter.com/ric_crypto_): Follow on Twitter