Flow の NFT を販売する戦略には、いくつかのパターンが存在します。この記事では、これらのパターンを洗い出し、それぞれの利点と課題をまとめています。それぞれには実際のプロジェクトの例が載っているので、実際の購入体験を調べることもできます。これらの戦略は、Flow に限らず、様々なブロックチェーンにも適用できる内容です。なお本記事は、公式ドキュメント「NFT Drop Strategies」を日本語に翻訳したものです。
NFT ドロップの様々な戦略を探る
NFT を事前に発行してオンチェーンで販売する
NFT を事前に発行してオフチェーンで販売する
NFT を先行販売だけしてあとから届ける
NFT をオンデマンド発行してオンチェーンで販売する
NFT をオンデマンド発行してオフチェーンで販売する
バウチャーを使って NFT をオンチェーンで販売する
まとめ
ここでは、NFT をリリースするためのさまざまな戦略について簡単に説明します。各戦略は、NFT ドロップのいくつかの重要な側面に焦点を当てています:
どこで NFT は販売されるのか?
いつ NFT は発行されるのか?
誰が支払処理を行うのか?
いつ購入者は NFT を受け取るか?
購入者は、あなたのプロジェクトをどれくらい信頼するのか?
あなたは、 NFT 購入者をどれくらい信頼するのか?
この戦略では、NFT は販売される前にすべて事前に発行されます。そして、オンチェーンのNFTStorefront コントラクトで売買され、完了したトランザクションがブロックチェーンに反映されます。
ブロックチェーンが支払いを処理するため、追加の決済手法に対処することなく、Dapp は成長できます。NFT 購入者は、トランザクションを成功させるために Dapp を信頼する必要がなく、必要なのは自分のウォレットだけなので、この戦略を好みます。この戦略はバックエンドを必要としないので、開発のコストと複雑さを軽減します。KYC(Know Your Customer、本人確認)がないので、買い手と開発者にとっては手間やストレスがない戦略ですが、開発者は顧客が実在の人物であることを確認できないため、アプリが Bot 攻撃にさらされる可能性もあります。
この戦略を採用したアプリの実例として、VIV3、BloctoBay、Chainmonsters、**NBA Top Shot **などがあります。
NFT を事前に発行し、Dapp のウェブサイトを通じて販売することも、代替となる戦略です。これにより、アプリ開発者は NFT の販売プロセスをより詳細に制御でき、Bot が Storefront コントラクトにアクセスするのを防げます。
この戦略のもう 1 つの利点は、開発者がクリプト決済に加えて、クレジットカードのような従来の決済手段をストアに実装できることです。これにより、NFT の売り手と買い手の双方にメリットがあります。なぜなら、売り手は最も便利な支払い方法を利用でき、NFT のストアはより多くの購買層を相手にできるからです。
この戦略では、NFT 購入者は、特にクリプトによる支払いは不可逆的であるため、アプリをより信頼する必要があります。また、従来の決済手段の決済処理業者をインテグレーションすることは、マーケットによっては難しく、NFT 購入者のユーザー体験が大きく異なる可能性があります。ストアのオーナーとしては、従来の決済手段を導入した場合、チャージバック(※クレジットカードの不正利用などにより、クレジットカード会社が売上を取り消して消費者に返金すること)の問題が発生するリスクもあります。
実際の例としては、**CNN Vault **や **RCRDSHP **などがあります。
NFT を貰える権利を先行販売して、後日届ける方法も、よく知られた戦略です。これは、コンテンツや技術に投資する前に、プロジェクトに対する関心を測るのに最適な方法です。購入者は、Dapp が構築され、コンテンツを配信する準備ができたときに、NFT を受け取ります。NFT の先行販売のためにスマートコントラクトを実装し、オンチェーンまたはオフチェーンのいずれかでトランザクションを処理できます。
この戦略を成功させるためには、NFT 購入者があなたのプロジェクトに大きな信頼を寄せる必要があります。まだ存在していないため、買い手はどの NFT を買うかを選ぶことができません。この戦略ではセカンダリーマーケットについてはあまり議論の余地を残していません。
この戦略では、購入者が買いたいと思ったときに NFT を発行して販売します。この戦略は構築が複雑であるため、他の戦略より一般的ではありません。これを実現するには、購入者のために NFT 販売コントラクトをカスタマイズし、ユーザーごとに独自のコンテンツを生成する必要があります。純粋にランダムでユニークなコンテンツを生成することは難しく、コンテンツのドロップを管理することも解決が難しい問題です。また、トランザクションがオンチェーンであるため、Dapp は Bot 攻撃の影響を受けやすくなります。
しかし、この戦略には非常にユニークな利点があります。NFT の希少性が予測でき、あなたの Dapp は売れ残りの在庫を持つことはありません。また、この戦略では中央集権的な在庫や決済処理を保持しなくてよいため、プロジェクトを可能な限り分権化できます。
実際の例としては、Bitku、AMM 駆動の NFT 発行、**CryptoPiggos **などがあります。
この戦略もオンデマンド発行しますが、取引はオフチェーンで行われるため、開発者は NFT の販売プロセスをより詳細に制御できます。オンデマンド発行では、Dapp は売れ残りの在庫を持つことはなく、クレジットカードのような従来の決済手段を実装できる利点もあります。また、KYC を行うことで Bot やその他の不正な購入者による NFT 購入を防げます。
この戦略は非常にユニークな利点がある一方で、設定が複雑なため、別の課題があります。オフチェーン取引とオンデマンド発行の組み合わせは、NFT の購入フローを完了するために、より多くのトランザクションを必要とすることを意味します。また、他のオフチェーン戦略と同様に、NFT の買い手は Dapp を信頼する必要があり、決済処理業者はマーケットによっては導入が困難な場合があります。
この戦略の実例として、**Dooverse **があります。
最後に紹介するのは、NFT 購入者がウェブサイトに登録して、NFT と交換できるバウチャー(引換券)を入手できるようにする方法です。バウチャーは購入者の認証として機能するため、ウェブサイトは NFT 購入が許可された人を管理しながら、オンチェーン取引の利点を享受できます。これは、Bot や未承認の購入者が NFT にアクセスするのを防ぎながら、オンチェーン取引を実現する素晴らしい方法です。
しかし、この 2 ステップのプロセスは、一部の NFT 購入者にとって手間が大きすぎるため、NFT の売れ行きが制限される可能性があります。また、バウチャーシステムは完全なものではないため、プロジェクトのバウチャーが不正に流通する可能性もあります。この戦略の実際の例としては、 JAMBB や **RoundLabs/Faze **などがあります。
NFT ドロップの戦略を選ぶのは難しいことです。各戦略にはそれぞれ利点と課題があり、プロジェクトにとってどの要素が最も重要であるかを検討することが重要です。様々な戦略を用いた実際の NFT プロジェクトの例については、Flowverse をご覧ください。
Zeroichi Arakawa