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f(x) Protocol ホワイトペーパー 日本語版

※2023/6/19に公開されたホワイトペーパーに基づき、内容を更新しました。

本記事は「f(x) Protocol」のホワイトペーパーを日本語訳したものです。

https://github.com/AladdinDAO/aladdin-v3-contracts/blob/main/whitepapers/f(x)_whitepaper_v2.pdf

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f(x) Protocol:分散型かつスケーラブルな低ボラティリティ資産で、米ドルステーブルコインを超えていく

概要

f(x) Protocolは、2つの新しいETHデリバティブ資産、1つはステーブルコインのような低ボラティリティ、もう1つはレバレッジの効いたETHロング無期限先物トークンを作り出す。これらのトークンは、ETH担保をfractional ETH (fETH)と呼ばれるボラティリティの低い成分(β < 1)と、leveraged ETH(xETH)と呼ばれるボラティリティの高い成分(β > 1)に分離することで作成される。βf = 0.1という制約を設けることで、fractional ETHトークンは暗号通貨市場の成長をある程度取り込みつつ、ボラティリティを十分に抑制して、ステーブルコインの特性を維持する。leveraged ETHトークンは本質的には資金調達コストがゼロで、レバレッジが変動するETHロングの無期限先物契約である。このシステムは、純粋なETHと厳選された流動性の高いステークされたETHデリバティブ担保トークン(すなわちLSD)の混合物によってのみ裏付けられているため、現実世界の資産による中央集権的なリスクにさらされることはない。fETHの最大流動性は、CDPによって発行されたステーブルコインと比較して迅速にスケールすることができる。これは、メンテナンスや資本の非効率性があるCDPの比較的低い需要ではなく、レバレッジの効いたETHロングポジション(xETH)の高い需要に基づいているためである。

1 序論

ステーブルコインは、分散型金融(DeFi)の実現に不可欠な技術である。それらは、オンチェーンでの法定通貨のスワップを可能にするだけでなく、強力な分散型金融商品を数多く生み出すことができる。さらに、すべての暗号通貨はボラティリティが高いため、最も暗号通貨に慣れた組織や個人であっても、経費の計画は法定通貨建てで行わなければならず、少なくともいくらかの法定通貨建ての準備金は保有しなければならない。

これらのトークンは極めて重要であるにも関わらず、新たなリスクをもたらし、DeFiの最も有害な破綻の原因ともなっている。純粋なアルゴリズムによるステーブルコインは、そのリスクについてほとんど語る必要がないほど見事に破綻したが、現在のステーブルコインの実装は、つまるところ長期的な成功を妨げる致命的な弱点に苦しんでいる。

ステーブルコインのユースケースの大半は、特定の法定通貨に対する固定ペッグを必要とするわけではなく、一般的に法定通貨に対するボラティリティの低さを必要とする。本ホワイトペーパーでは、独自のメカニズムを用いて、低βのステーブルコインに近い「fETH」、高βのレバレッジの効いたETHロング無期限先物契約である「xETH」という2つの新しいETHデリバティブトークンを作成するプロトコルを紹介する。レバレッジの効いたETHロングトークンは、オンチェーン取引のための強力な新しい分散型のツールとなり、低ボラティリティトークンは、中央集権的なリスクを排除しながら、DeFi業界の需要を満たすのに十分効率的なスケールができる、現在のステーブルコインの代替手段となる。

2 ステーブルコインのリスクとスケーリング

近年、ステーブルコインに見られる最も明白なリスクは、純粋なアルゴリズムによる(担保不足または担保無しの)実装であり、TerraによるUSTはその最たる例である。この種のステーブルコインを安全で信頼性の高いものにすることは不可能かもしれないが、この議論の目的上、長期的な信頼性を確保するためには、即座に不適格となるほどリスクが高い設計であると考えることにする。

残りの設計では、現在の市場には大きく分けて3種類のステーブルコインが存在する。

  1. 法定通貨で裏付けされたステーブルコイン(USDC, USDT)

  2. アルゴリズムによるものだが、法定通貨で裏付けされたステーブルコインを全面的または部分的に担保とするステーブルコイン(DAI, FRAX)

  3. 完全に分散化されたCDPアルゴリズムによるステーブルコイン(LUSD)

(1)(2)はどちらも中央集権的なリスクに悩まされ、(3)は(1)(2)に比べてまだスケーラビリティと資本効率に難があるのが現状である。このような中央集権的なリスクとスケーリングの課題は、他の解決策に門戸を開いている。

2.1 中央集権的リスク

中央集権はしばしば強みであるかのように見えるため、DeFiにおいて最も狡猾なタイプのリスクである。中央集権化された準備金モデルに基づくステーブルコインは、担保が発行されたトークンと同じ通貨建てであるため、資本効率が高く、ステーブルコインに対する直接的な需要に完全に基づいて、簡単に鋳造、償還することができるため、非常に迅速なスケールが可能である。問題は、そのようなプロトコルでは、法定通貨の準備金を維持するために、現実世界の実体を必要とすることである。このような現実世界の実体や管理された準備金自体が、クリプトの外部からの攻撃対象領域や故障モードをもたらす。このことは、USDCの準備金の何分の一かを保有していたシリコンバレー銀行の債務超過危機の際に起きたUSDCのデペッグ劇で十分に証明された。

この問題はすぐに解決されたが、このエピソード全体は、中央集権的な機関に準備金が保管されているプロトコルは、この種のリスクを避けることはできず、小さな中央集権的なリスクでさえ、すぐに存亡の危機に陥る可能性があるという事実を浮き彫りにした。このリスクは、法定通貨に裏付けされたステーブルコインを担保にするステーブルコインにも波及する。中央集権的なリスクを回避することが、そもそも暗号通貨が誕生した理由であり、このようなトークンを中心にDeFiを構築し続けることは、ほとんど意味がない。

2.2 スケーラビリティと資本効率

2章で挙げた3番目のステーブルコイン(分散化されたCDP裏付け型)は分散型担保のみを受け入れることで中央集権的なリスクを回避できるが、スケーラビリティと資本効率に難がある。また、担保は鋳造されたトークンとは異なる通貨建てであるため、これらのステーブルコインは100%の資本効率には遠く及ばない。完全に分散化されたの担保は一般に変動しやすいため、借入限度額は、プロトコルが債務超過に陥る前に脆弱なポジションを清算するのに十分な時間を確保できるよう、保守的である必要がある。その上、個々の借り手は、清算リスクを避けるために、プロトコルの制限に加えて、さらに保守的になる必要がある。

CDPを裏付けとするステーブルコインのスケーラビリティに関する主な課題は、市場での流動性が、ステーブルコインに対する需要ではなく、CDPに対する需要によって動かされることである。CDPを保有する場合、利用者は担保の価格に完全に左右され続け、また清算リスクを避けるために、常に監視し、定期的に担保を上乗せする必要がある。CDPは、イールドファーミングや税金の最適化など、特定の状況では非常に有用だが、比較的ニッチな金融商品であり、その需要は、ステーブルコインがクリティカル・マスを達成できるような流動性の深さを市場に生み出すほど迅速にはスケールしない。

3 f(x)の設計目的

f(x) Protocolは、ETHを2つの有用なトークンに分解する共生システムの構築を目的としている。xETHについては、以下のようなレバレッジの効いたETHロングトークンを作成する。

  1. 完全に分散化され、Ethereumネイティブである

  2. コンポーザブルであり、オンチェーンの流動性がある

  3. 清算リスクが極めて低い(NAVが0になるなど)

fETHについては、以下のようなボラティリティの低いトークンを作成する。

  1. 完全に分散化され、Ethereumネイティブである

  2. 市場へのエクスポージャーを小さく(10%)しながら、ボラティリティを最低限に抑える

  3. ステーブルコインの需要に直接応じて、即座に鋳造・償還することができる

  4. CDPの需要の何分の一ではなく、xETHの需要の何倍かに基づいた最大流動性の深さを持つ

3.1 適切なβを選択する

βが0.1であれば、fETHはETHの1/10の値動きとなるが、本ホワイトペーパーで説明するメカニズムは、任意のβをターゲットにすることができる。例えば、同じ仕組みでβf = 0をターゲットにして、ステーブルコインを作ることも可能である。

β = 0.1をターゲットとすることで、fETHはETH/暗号通貨市場全体に対する米ドルの価値の損失に対するヘッジとなる。長期的には、法定通貨の価値が暗号通貨の価値に対して下落し続けると仮定すると、fETHはマイルドなデフレ通貨と考えることができる。さらに、長期的にはイーサリアムは、特定の法定通貨に縛られるのではなく、イーサリアム経済に固定されたステーブルコインを必要としており、fETHはそれに向けた一歩となる。最後に、fETHトークンがETH価格の変動をある程度吸収できるようにすることで、リスク管理の設定閾値をやや控えめにすることができる(詳細は5.1節参照)。

4 f(x) ProtocolによるETHの分解

f(x) Protocolは、ETHおよび厳選されたETH LSD(Liquid Staking Derivatives)を担保として受け入れ、利用者はこれを使用して低ボラティリティおよび/または高ボラティリティ(β)トークンを鋳造することができる。ETHまたはETH LSDを供給することで、利用者はETHの価格と各トークンの現在の純資産価値(NAV:Net Asset Value)に基づいた量のfETHおよび/またはxETHを鋳造することができる。反対に、利用者はいつでもfETHまたはxETHをそのNAV分の準備金のETH+LSDと交換することができる。

4.1 ETHとLSDの準備金

f(x)の準備金は、固定比率で保有されるETHと厳選されたETH LSDのバスケットで構成される(ガバナンスプロセス後、パラメーターによって調節可能)。この比率を維持するには、resETHと呼ばれるインデックス付きの準備金ラッパートークンの使用する。技術的には、fETHとxETHのすべての鋳造と償還はこのラッパートークンを使って行われるが、f(x)はそれを好む利用者のために、ラッパートークンを(意識せずに済むように)透明にする便利なザッピング機能を提供する。内部計算の目的上、ETHとLSDは同等に扱われ、LSDの流通市場価格とそのステークされたETH相当額との間の変動は、ラップ/アンラップのステップで処理される。

準備金のLSD成分がETHステーキングの利回りを生み出すと、それらの利回りは収穫および再投資され、その成長を反映してインデックスが増加する。f(x)準備金のresETHによって生成されたステーキング利回りは、プロトコル収益として収穫され、その一部はリバランシング・プール(5.1節を参照)の預金者に利回りを支払うために使用される。

4.2 暗号通貨のボラティリティ

伝統的な金融の世界では、βはある証券やポートフォリオのボラティリティを市場と比較して測定するものである。法定通貨がこれらの測定値の分母であるため、現金は β = 0と言われる一方、β = 1のポートフォリオは市場のリターンを完全に反映する(S&P 500 ETFがその例である)。市場と同じ方向に動くが、相対的な大きさが小さいポートフォリオはβ < 1であり、市場よりも同じ方向に大きく動くポートフォリオはβ > 1である。

f(x)の目的上、ETHの価格を「市場」と定義するため、βはETHと比較したある暗号通貨のボラティリティとなる。従って、ETH自体はβ = 1であり、完全なステーブルコインはβ = 0である。

fETHはβ = 0.1をターゲットとしており、これはf(x)が(NAVを制御することで)、ある期間においてETHが得る価値の一部だけを得たり失ったりするように、その価格を制限することを意味する。ETHの価格が10%下落した場合、fETHのNAVは1%しか減少しない。上昇局面でも同様の減衰があり、ETHの価格が10%上昇すると、fETHのNAVは1%上昇する。

xETHは、fETHから保護されたETHの値動きをすべて取り込むため、ETHの価格よりも大きく動くNAVを持つ(すなわち、β > 1)。任意の時点における正確なβは、常に変化するfETHとxETHの相対的な供給量の合計に基づいている。例えば、xETHのβ = 2の場合、ETHの価格が10%上昇すれば、xETHのNAVは20%上昇する。高βのもう一つの見方は、利益も損失も増幅されるため、市場(ETH)に対するレバレッジリターンとして見ることである。

4.3 f(x)の不変式

fETHとxETHのNAVは、すべてのfETHの総価値とすべてのxETHの総価値が常にETH準備金の総価値に等しくなるように、ETHの価格に応じて変化する(ここでも、準備金の各LSDはETHと同等に扱われる)。このようにして、すべてのfETHとxETHトークンは、いつでもそのNAVに裏付けされ、償還可能である。数学的に言えば、常に不変式が成立することになる。

式1
式1

ここでnethはETH担保数、pethは米ドル建てのETH価格、nfはfETHの総供給量、pfはfETHのNAV、nxはxETHの総供給量、pxはxETHのNAVとする。

4.4 Fractional ETH: 低ボラティリティ資産、または「フローティングステーブルコイン」

ステーブルコインの能力は、価格のボラティリティと内在的リスク(低いことが望ましい)、そして流動性(深いことが望ましい)の3つの重要な要素に基づいている。最初の2つの要素については、Fractional ETHが中央集権的なリスクを回避し、ボラティリティを十分に低く抑え、ステーブルコインの主要な特徴を持っていることが明らかである。流動性の深さは、少し複雑な話になる。

CDPに裏付けされたステーブルコインはCDPの需要に応じてのみ鋳造されるのに対し、fETHは直接的な需要に応じて鋳造される。fETHの場合、直ちに鋳造できる量を制限する唯一の要因はxETHの供給量であり、これはfETHの総供給量の変動を吸収するのに十分でなければならない。xETHのレバレッジは変動するように設計されているため、比較的少量のxETHが大量のfETHの供給を支えることができる。xETHの供給量が変化する中で、fETHの価格安定を維持するシステムの能力については、5.1節で論じる。

fETHの鋳造はNAV(価格)に影響せず、xETHの供給が十分にある限り、最小限の手数料で鋳造することが可能である。つまり、fETHの需要がその時々のfETHの供給量を決定する一方で、その時々の需要に応じて最小限の手数料で直ちに鋳造できるfETHの数は、一般にはるかに多く、xETHの供給量の倍数に制限されるだけであり、xETHはその需要によって制限されている。

fETHは、米ドル(または特定の法定通貨)に直接縛られることなく、ステーブルコインの低ボラティリティを提供し、同時に、市場でユニークな分散化、スケーラビリティ、資本効率の組み合わせを提供する。

4.5 Leveraged ETH: 資金調達コストゼロの無期限先物契約

xETHトークンはレバレッジETHとも呼ばれ、清算のリスクが低く、資金調達コストがゼロ(極端な場合、xETHの鋳造者は本当は手数料を得ることができる)、分散型でコンポーザブルなレバレッジの効いたETHロング無期限先物契約である。xETHの保有者は全体として、fETHの供給のボラティリティのほとんどを引き受けており、f(x)の鋳造と償還のポータル、またはオンチェーンのAMM流動性プールを使用して、トレーダーは自由にポジションを入れ替えることができる。

ETHのロングポジションに対する需要が消えることはないため、xETHの需要は、あらゆる市場環境において変動はあるものの、持続すると予想される。このことは、未決済建玉(図1)と資金調達率(図2)の組み合わせによってよく示されている。

図1: 2020年以降のETH未決済建玉
図1: 2020年以降のETH未決済建玉
図2: ETH資金調達率(プラスはショートよりロングの需要が大きいことを示す)
図2: ETH資金調達率(プラスはショートよりロングの需要が大きいことを示す)

ETHの資金調達率がマイナスになることはほぼなく、マイナスになった場合でも未決済建玉は非常に大きいため、(一時的に)支配的ではなかったとしても、ロングポジションの需要があることは明らかである。このように継続的に実証されたロングポジションの需要レベルと、分散化とコンポーザビリティという非常に望ましいDeFiの特徴を考慮すると、xETHはトレーダーのツールキットに強力な新しいDeFiプリミティブとツールを提供することになるだろう。

xETHトークンの正確な実効レバレッジは、xETHとfETHの相対的な供給量が鋳造と償還によって変化するため、時間とともに変化する。fETHと比較してxETHの供給が多いということは、fETHによる過剰なボラティリティがより多くのトークンに分散されるため、xETHの実効レバレッジが低いことを意味する。反対に、fETHの供給量が多ければ多いほど、より少ないxETHトークンにボラティリティが集中し、実効レバレッジは高くなる。詳細は7.3.1項を参照。

5 システムの安定性

上記のシステム説明から、システムが正常に動作し、fETHのNAVのボラティリティを抑制するためには、xETHが十分に供給されている必要があることが明らかだろう。システムの能力について考える有用な方法は、f(x)システム全体を一つの大きなCDPとして考えることである。ETH準備金の合計は、CDPの担保の合計を表す。fETHの総供給量は借入額を表し、xETHの総供給量は供給された担保と借入額の総和との差額を表す。

このレンズを通して見ると、CDPと同様にCR(Collateralization Ratio:担保率、 ヘルスファクターと呼ばれることもある)を使ってシステムの健全性を測ることができる。システムが正常に機能するために「十分なxETHの供給を必要とする」ということを言い換えれば「100%以上のCRが必要だ」ということになる。f(x)の場合、システムのCRは、担保価値の合計をfETHのNAVの合計で割った値で示される。

式2
式2

fETHまたはxETHの鋳造および4.3節に記載したいずれかのトークンのNAVの調整は、CRに影響を及ぼす。仮にシステムのCRが100%になった場合、xETHのNAVはゼロになる。fETHは引き続き鋳造・償還可能だが、そのβは1に跳ね上がり、ETHの値動きに完全にさらされることになる(つまり、低ボラティリティではなくなる)。f(x)にはリスク管理モジュールがあり、CRが下がりすぎた場合に作動し、このようなことが起こらないようにする。

5.1 リスク管理の概要

システムのCR(式2)が、βf = 0.1を維持する能力が危険にさらされるレベルまで低下した場合、fETHの償還またはxETHの鋳造のいずれかによってシステムを安全な状態に戻すことができる。f(x)のリスク管理モジュールは、必要なときに確実にこれを行うために、鋳造/償還コントロールとリバランシング・プールという2つの幅広いアプローチを利用している。

5.1.1 バリュー・アット・リスクと安定モードの閾値

安定モードが作動する閾値の選択は、システムCRを100%に押し下げる(すなわち、xETHのNAVを0にする)ような深刻な値下がりが1日に発生する確率に基づいている。システムのCRが低ければ低いほど、そのような事象を引き起こすために必要なETH価格の下落の大きさは小さくなり、そのような事象を経験する確率は高くなる。2017/01/01以降のCoinGeckoからのETHの価格データに基づくバリュー・アット・リスク(VaR)計算を用いて、様々な1日の価格下落を経験する確率を計算した。

不安定化する事象の発生する確率が0.10%以上になると、安定モードが作動するように閾値を設定した。我々のVaR計算に基づくと、0.1%の確率の事象は、ETHの1日の価格下落が25%に相当するため、最低130%のCRがあればより小さい規模の事象から保護することができる。我々は、市場のボラティリティがもたらすリスクに対処するために、プロトコルのリスク管理対応にかかる時間を想定し、1日という期間を用いている。

わかりやすく言えば、プロトコルのCRが130%を下回ったら、それを元に戻さなければならない。

5.1.2 安定モード:鋳造/償還制御

安定モードでは、鋳造と償還のルールが以下のように変更される。

  1. fETHの鋳造は無効

  2. fETHの償還手数料は免除

  3. xETHの鋳造手数料は免除

  4. xETHの償還手数料は引き上げ

これらの制御は、利用者の行動がシステムを安定から遠ざけることがないように、またプロトコルの安定に有益な行動にはプラットフォーム手数料が課されないように設計されている。

5.1.3 安定モード:リバランシング・プール

利用者の有益でない行動を制限するために鋳造/償還制御が導入されたため、プロトコルの次の動きは、CRを積極的に増やすことである。これは、リバランシング・プールと呼ばれる、この目的のために維持されている準備の整ったプールから、fETHトークンを償還することで達成される。

リバランシング・プールは、f(x)が提供する保管庫で、fETH保有者はfETHを預けることで大きな利回りを得ることができ、必要に応じてプロトコル準備金(resETHにラップされている)に償還することができる。f(x)プロトコルの準備金全体によって獲得されたETHステーキング利回りのシェアは、このプールのインセンティブに使用され、プロトコルはネイティブガバナンストークンの排出でそれらを補強する能力を持っている。プールの預金者は高い利回りを獲得し、安定モードがいずれかの時点で発動した場合、預金者のfETHの一部は自動複利のresETH準備金トークンに償還される(4.1節を参照)。このプールにおける良好な流動性は、必要なときにプロトコルを安定させるために十分なfETHにアクセスできることを保証する。

5.1.4 リキャピタリゼーション(資本再構成)

プロトコルを安定させるために利用できるfETHが不十分で、不安定化の確率が許容できないほど高いという最も極端なケースでは、プロトコルはxETHを鋳造するか、fETHを購入して償還することで資本を増強するために、ガバナンストークンを発行してETHを調達する機能を備えている。

6 手数料

f(x)は、準備金のLSD部分のETHステーキング利回り(4.1節参照)とfETHおよびxETHの鋳造・償還に手数料を課すことで収益を得る。鋳造・償還手数料は、5.1.2項に示したように、システムが通常モードか安定モードかによって異なる。

表1: f(x)プロトコルの各運用モードにおける想定鋳造/償還手数料体系。手数料はパラメーターで調整可能。
表1: f(x)プロトコルの各運用モードにおける想定鋳造/償還手数料体系。手数料はパラメーターで調整可能。

7 算定

7.1 プロトコルの最初期と流動性の種

プロトコル最初期のfETHとxETHのNAVは、ともに1米ドルに設定されている。f(x)の立ち上げの一環として、トークンセールでETHの準備金が調達される。そのETHの一部がシステムに供給される最初の担保となり、同量のfETHとxETHが鋳造され、トークンセールで得た他のETHとペアになって流動性プールの種となる。

7.2 f(x)の不変式に基づく準備金割り当て

ETHの総準備金は、1つはfETHを、もう1つはxETHを裏付けるものと考えることができ、各トークンを裏付ける準備金の割合は、ETHの価格によって変化する。λfとλxをそれぞれfETHとxETHに対する現在の割り当てと定義すると有用である。

式3
式3

式3を用いると、式1で定義された不変式は、λf + λx = 1と書き換えることができる。ETHの価格が変化すると、fETHとxETHのNAVがともに次のように更新される。

  1. fETHのNAVはETHの価格変動の10%しか変動しない(βf = 0.1)

  2. xETHのNAVがf(x)の不変式(式1)を満たすように変化する

7.3 ETH価格の変動に伴うfETH、xETHのNAVの変化

ETHの価格が変化すると、βf = 0.1となるようにfETHのNAVが更新される。時刻(t-1)から時刻(t)までの期間におけるETHのわずかなリターンが次のように与えられるとする。

式4
式4

すると、fETHのリターンは

式5
式5

となるため、fETHのNAVが以下のように更新される。

式6
式6

xETHの新しいNAVは、式6を使って、式1を再整理することで簡単に算出できる。

式7
式7

7.3.1 xETHのレバレッジ

ある期間におけるxETHのNAVの変化は、前期のfETHの供給量とxETHの供給量の割合に依存する。前期の担保総額に占めるfETHの供給割合を用いて、xETHのおおよそのレバレッジを以下のように計算することができる。

式8
式8

鋳造されたfETHがゼロの場合(xETHの数はゼロでないと仮定)、λfはゼロに等しく、Lx=1、すなわちxETHはレバレッジ1倍のETHロングとなる。fETHの供給が増加するにつれて、xETHのλfは増加し(これはCRの減少を意味する)、xETHトークンのレバレッジは増加する。これを視覚的に示したのが図3である。

図3: リスクモジュールの発動ポイントを示すxETHトークンのレバレッジ対λf
図3: リスクモジュールの発動ポイントを示すxETHトークンのレバレッジ対λf

λfが上昇しすぎた場合、5.1節で述べたリスク管理モジュールが作動し、xETHとfETHの間のバランスを取る方向にシステムを強制的に戻す。これに対する最初の反応である安定モードは、レバレッジ4倍前後で発生するため、通常運用時(リスク管理モジュールが作動していない時)は、xETHのレバレッジは1倍~4倍の範囲で変化する。xETHのレバレッジは、リスク管理モジュールが作動している間は高くなる可能性があるが、安定化措置がλfを押し下げるまでの一時的なものに過ぎない。

7.4 fETHとxETHの鋳造と償還

利用者はいつでもNAV(すなわちpfとpx)に基づいて、fETHまたはxETHを鋳造・償還することができる。通常運用時(5.1節で説明したリスク管理モジュールが作動していない場合)では、鋳造・償還はfETHまたはxETHのNAV(pfまたはpx)に影響を与えず、fETHまたはxETHの総供給量(nfおよびnx)を変更するだけである。異なるリスク管理モジュールは、安定手数料の適用を通じて、鋳造と償還によるNAVへの影響を生じさせる可能性がある。

片面(fETHのみ、またはxETHのみ)の鋳造と償還が認められているため、これらの操作はシステムのCRに影響を与える(したがって、λfとλxにも影響を与える)。

8 結論

我々は、ETHを新しい低ボラティリティ資産とレバレッジの効いたETHロング無期限先物トークンのペアに分かつプロトコルを提案した。市場がxETHに対して十分な需要を示せば、fETHは完全に分散化そして担保されたステーブルコインが、これまでに達成したことのない速さでスケールすることができると思われる。この研究が発展するにつれて、WBTCのような他の形式の担保を調査したり、トークンをより多様なトークンに分離するf(x)スタイルのシステムを構築など、いくつかの自然な拡張や新しい方向性が検討される可能性がある。

原文

https://github.com/AladdinDAO/aladdin-v3-contracts/blob/main/whitepapers/f(x)_whitepaper_v2.pdf

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