Web3の台頭に伴い、クリエイターエコノミーの活性化が期待されている。
メタバース空間内の各種アイテムを制作するクリエイターや、NFTマーケットプレイスでデジタルアートやゲームアイテムを販売するNFTアーティストなど、Web3時代のクリエイティブシーンはさらに盛り上がることが予想される。
そんななか、FanTech(ファン × テクノロジー)のパイオニアとして、ファンビジネスの市場を牽引してきたのがSKIYAKIだ。
同社はクリエイターエコノミーを支えるファンクラブやチケット・グッズ販売、動画配信などのサービスをオールインワンで提供するプラットフォーム「Bitfan(ビットファン)」や「Bitfan Pro(ビットファンプロ)」を提供し、音楽や芸能、アスリート、YouTuber、TikTokerなどのクリエイター活動を支援している。
来たるべきWeb3時代におけるファンビジネスの展望や、日本が育んできた“推し文化”とWeb3の親和性の是非について、株式会社SKIYAKI 代表取締役社長の小久保知洋氏に話を聞いた。

SKIYAKIは2003年に創業し、「創造革命で世界中の人々を幸せに」というミッションのもと、クリエイターやアーティストのファンクラブ運営や物販を手がけてきた。
他社が大規模なファンクラブを軸にビジネスを展開するのに対し、SKIYAKIはインディーズ(独立系)のアーティストやアップカミング(今後の飛躍が期待される)アーティストなど、ファンビジネスの裾野を広げるために多種多様なクリエイターを支援してきたのだ。
そして、スマートフォンやSNSなどが台頭しテクノロジーの発展が進む時代に合わせ、SKIYAKIはいち早くファンビジネスのデジタル化にも注力してきた。
2000年代のファンクラブコンテンツといえば、アーティストのチケット先行販売や週1回程度のブログ更新が主流だった。それがSNSなどのソーシャルメディアが台頭し、さらにはYouTubeなどの動画配信サービスの登場によって、ファンクラブのコンテンツが多様化。ファンクラブ限定の特典やサービスなどが求められ、それに伴うさまざまなコンテンツを提供するプラットフォームとしての役割が必要になってきたのである。
2012年頃にSKIYAKIがスタートさせたプラットフォーム型のファンクラブCMS(2018年にBitfan Proへ名称変更)は、ファンが1つのIDを持つことでチケットの購入やアーティストのライブ配信、グッズ購入などができるプラットフォームサービスとなっている。
SKIYAKIはファンのニーズが変化するたびに上述のファンクラブCMSへ機能を追加してきたが、2018年に、一意のID管理によってプラットフォーム上のユーザー行動が可視化ができるBitfanをリリースし、そこから“ファンの熱量の見える化”が可能となった。

現在、Bitfanはファンの熱量を可視化する機能を残しながらも、そのコンセプトを変え、「ファンのためにできることを。」とのブランドメッセージを掲げ、あらゆるクリエイターがファンのために”できること・したいこと”を全て実現することを目指す、オールインワン型のファンプラットフォームへと姿を変えている。
「チケットセールスやグッズ販売など、ファンクラブの管理をアーティスト自身やマネージャーが回すのは結構難しいものがあり、弊社のプラットフォームサービスはそれを補うソリューションとしてアーティストやクリエイターを抱える事務所や企業に支持されています。また、ファンクラブに対するニーズも時代とともに変化するスピードが早く、ECやライブ配信機能を持った一つひとつのサービスを個別で活用しても、一括で管理しづらく運用コストもかかってしまう。このような課題を解決し、オールインワンで利用できるプラットフォームを提供できたのが、事業成長に貢献できた要因だと思っています」(小久保氏)
SKIYAKIは2017年に東証マザーズ(現、東証グロース)市場へ上場を果たし、現在は「アーティストやクリエイターとファンをつなぐ」ためのプラットフォームビジネスのさらなる拡大に勤しんでいる。
こうした状況のなか、昨今話題になっているWeb3やNFTなどの最新トレンドに見るクリエイターエコノミーの潮流について、小久保氏はどのように捉えているのだろうか。
「Web3は人によって解釈が異なりますが、いわゆる非中央集権的なインターネット世界がクリエイターエコノミーにもたらす影響というのは、正直なところまだ不透明なところが大きいと思っています。NFTやメタバースなどの新しいテクノロジーが生まれるのは非常に良いことだと思うのですが、果たしてそれがアーティストやファンにとっていいものなのか。本当の意味でクリエイター活動に活きてくるのかは、まだ半信半疑といった所感を持っています」
かくいうSKIYAKIも、いろいろなWeb3に関連する技術調査や導入検討を継続しているものの、慎重な姿勢を持ちながら機会を伺っている状況だという。
「我々のBitfanでファンクラブを運営するアーティストや企業などのオーナーにとって、もしWeb3が求められているなら、取り入れることも視野に入れつつ、どうマネタイズにもつなげていけるかが肝になります。単なるバズワードだからといって、安易にWeb3を活用したコンテンツを作っても、満足度の高いサービスが提供できるわけでも、アーティストの抱える課題の解決にもならないと思っています」
現時点でアーティストやクリエイターはもとより、応援するファンもWeb3のことについては理解が浸透しておらず、ファンクラブの中でWeb3の経済圏を急速に推し進めていくのは現実的ではないと言う。
「例えば、メタバース上にVTuberがいつでもライブ配信できるワールドを作っても、Bitfanの月額課金モデルでは、提供するサービス体験とコストが見合いません。ファンクラブとWeb3の技術をどう組み合わせていくかはまだまだ模索している段階です」
一方で同社は実験的な取り組みとして、NFTの活用を進めている。SKIYAKIとして初めてNFTを活用した事例が、女優・タレントとして活躍する今田美桜のオフィシャルファンクラブ向けのオフラインイベントで「記念NFT」を配布する取り組みだった。
「昔からファンクラブの会員番号は唯一無二で、ファンにとっても重要なものという認識がありました。また、推しのアーティストのライブに行ったときのチケットの半券を記念に保管しておくなどの文化も存在していて、これはNFTの特性と言える非代替性やユニーク性、保有の証明性といったものとの親和性が高いと思っていたのです。そこに、ちょうどファンクラブの会員向けイベントの参加特典として、記念NFTを発行したいというお話があり、NFTサービスの開発に着手することにしました」
だが一般的にNFTは、ウォレット開設の難しさや高額なガス代などの問題があり、記念NFTを発行してもファンがウォレットに収納するまでのハードルがどうしても高くなる。
そこで、LINEが独自開発したブロックチェーンである「LINE Blockchain」を採用。LINEアカウントを持っていれば、容易に記念NFTを受け取れるUXを実現したのだ。
このような意思決定には、「デジタルに対して希少性を出すものがNFTであり、NFTのコレクティブル性が今後求められる」という背景があると小久保氏は話す。
「最近ではオンライン握手会やライブ配信時の投げ銭・ギフティングなど、ファンの消費行動がデジタルへ寄ってきています。Bitfanの手がけるサブスクリプションビジネスのなかで、ファンとアーティストをつなぐNFTの活用についてはライブやイベント参加時の記念NFT以外にも、ファンクラブ継続を記念したNFTやNFT付きのグッズ販売など、幅広い用途での展開が可能だと考えています。まずは直近でできるところから着手していきますが、Bitfanでは独立系アーティストが世界へ打ってでるサポートをしていますので、将来的にはグローバルに流通しているパブリックチェーンでのNFT展開もサポートしていきたいですね」

ここからは、Web3時代のファンビジネスのあり方について、小久保氏の見解を伺っていく。NFTやDAO、メタバースなど、Web3関連の技術が秘めている可能性やクリエイターにもたらす機会、そして考えられるビジネスとしての将来性の有無を語ってもらった。
「Bitfanではアイドルからバンド、俳優、格闘家、スポーツ選手などさまざまなアーティストやクリエイターがファンクラブを持っています。ゆえに、Web3との親和性を考える際、その相性はファンクラブのジャンルによって異なってくると認識しています」
たとえば、VTuberであれば、ライブコンテンツを中心にメタバース空間上に常設のコミュニティを作り、そこにIPと連携させていくことでの発展が期待できる。また、今後メタバース空間への没入性は飛躍的に高まっていくことが期待されるので、ファンとアーティストのバーチャル上での交流も盛んになるだろう。
さらにNFTは、先述の通りデジタル空間上の希少性を担保するものなので、「ファンクラブ限定のNFTやチケット購入者限定のNFTなど、コレクション性に富んだサービスの展開をしていくことで、新たな価値が創造できるもの」だと小久保氏は捉えているという。
つまりWeb3時代において、NFTやメタバースをうまく取り入れれば、ファンとアーティストとの接点が増え、ファンコミュニティの熱量がより一層高められるというわけだ。
「推し活にとって、好きなアーティストと接する機会が増えるのはすごく重要なことです。何気ない日常から活力を得るためにメタバース空間に入って、非日常感を味わい、明日もまた頑張れる。アーティストの特徴やファン層によって、Web3と親和性があるかはさまざまな意見をもとに吟味していく必要はありつつも、使いどころは無限にあると思っています」
その一方、DAOと推し文化の相性はあまり良くないと小久保氏は説明する。
「日本の推し文化って、尊い存在を追うだけで楽しいんです。そこに熱量を注ぎ、応援するためにお金を払うのが、日本のファンクラブの特徴と言えるでしょう。とかく、Web3の最前線では投機やビジネスについての議論が多くなされていて、とりわけDAOの所有権や参加権が絡むと、従来から培ってきた日本のファンクラブの良さが損なわれかねません。なので、現状ではDAOは推し文化に不向きだと考えています」
Web3とクリエイターエコノミーの関係性は、今後もさまざまな意見や議論が起こり、多くのプレーヤーが最適解を探しながらトライアンドエラーを重ねていくことだろう。
ファンビジネスにおいては、エンゲージメント向上のためにメタバース空間を活用したり、NFTの希少性を生かしたイベントを開催したりするなど、クリエイターにとっても新たなキャッシュポイントになり得るかもしれない。
最後に小久保氏へWeb3とファンビジネスの展望について伺った。
「実はもともとファンクラブでは、早期入会キャンペーンとして、先着限定で物理会員証を配布したりしていました。それがNFTに変わっただけなので、先着会員1,000名限定のNFT発行や1回しかないアーティストの生誕祭の記念NFTは、ファンクラブに入るきっかけづくりになると思っています。NFTアートという文脈よりかは、ファンマーケティングの一環として、ファンクラブとNFTを紐付けていく体験設計が重要になってくるでしょう。
その際に、ファンが満足することはもちろん、アーティストやクリエイターに収益が還元されるかも、しっかりと考えて設計する必要性があります。使い方を間違えると、お金儲けの要素が強くなってしまい、アーティストとファンの良好な関係に影響を与えてしまいます。今後もWeb3については、いろんな角度から検証し、ユースケースを参考にしていきながら、SKIYAKIで提供できるサービス価値を向上させられるように尽力していきたいと思っています」
<取材・文・撮影(人物)/古田島大介>

