2024年7月13日にCode for JapanとDigDAOが共同で、Quadratic Fundingという資金分配の仕組みを利用した助成金分配の実験を開始しました。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000067.000039198.html
DeSci Tokyoは、この実験の趣旨に賛同しGitcoin Grants 20で得られた資金を実験のプール金として寄付することを決定いたしました。
本実験では、『Quadratic Funding(QF)という市民のニーズに基づいて公共財に資金を分配するための民主的なメカニズムを導入し、シビックテックプロジェクトへの支援』を実施します。これにより様々な課題を洗い出され、多様なデジタル公共財プロジェクトを支援するエコシステムを構築するための礎になることを期待しています。さらに、公共財としてのサイエンスに支援の枠組みが拡張されることも期待しています。
本実験やQuadratic Funding(QF)の詳細については、元の発表にゆずり、DeSci Tokyoが『デジタル公共財への資金分配』を支援する理由についてここに簡単に残します。
DeSci Tokyoは、分散型技術を用いて科学の課題を解決する分散型科学 (Decentralized Science, DeSci)を推進し、実践するための組織です。DeSciでは通常、ブロックチェーンを活用して、データの共有、研究の透明性の確保、創薬における資金調達の支援を行う新たなシステムを提案しています。DeSciをリードするMoleculeやbio.xyzを中心としたエコシステムでは、金融の仕組みを組み込むことでバイオテックや創薬領域における支援方法を実験しています。
しかし、多くの研究が学術領域を超えて利用されたり、様々な研究者によって推進されるオープンアカデミアを実現するには、創薬等など資金の循環が起こりやすい領域でだけではない探索的な研究の支援やその事業支援を行う仕組みが必要なはずです。その解決策としてこれまで歴史的に幾つか提案がされてきました。(濱田, 情報の科学と技術, 2024)
戦略研究: 1980年代後半以降に登場した国家戦略に重要な研究領域に先行的に投資するタイプの研究開発モデル。さきがけやCRESTなど戦略的創造研究推進事業の思想的根拠と思われる。
Small Business Innovation Research (SBIR): 1982年に中小企業技術革新開発法をベースに実施された『事業化するにはリスクが高い領域で活動する中小企業』を対象として支援する制度。米国国防省などすでに投資リターンが4500%以上となるなど、国家政策として1990年代以降、日本を含め先進国各国で導入された。一方で日本では単なる中小企業支援になったという批判もある。
寄付グラント: 篤志家による寄付による研究所設立やグラント設立など。
クラウドファンディング: インターネットを通じて、新たな製品やイベント等への支援を呼びかけるモデル。2009年に登場したKickstarterなど様々な事業会社が存在する。米国ではExperiment社、日本でもacademicが学術版クラウドファンディングとして活動している。
これらのモデルは、税金や寄付金を間接的に専門家や官僚機構によって分配するモデルか、市民から直接的に資金を得るモデルになっています。Gitcoinを通じてQuadratic Funding(QF)で実施されている資金分配モデルはプール金を集め、その分配先を市民もしくは複数のステークホルダーの集合体による寄付を通じた投票によって決める中間的なモデルと言えます。
オープンアカデミアにおいて、『研究の意義が直接的に市民に伝えられその推進が支援される姿が望ましい』と考えるならば、このプール金をもとにした寄付投票を通じた資金分配モデルは実験に値すると考えております。また、DeSci Tokyoのミッションとして掲げている『新たな研究エコシステムの支援や探索』の観点からも、研究が多様な資金源によって支援される仕組みの実験は望ましいと考えています。
このCode for JapanとDigDAOによる実験により、多くの課題が明らかになり社会的実験として振り返りの機会もうけ、より多くの方々にその意義が理解されることを期待します。
執筆
濱田太陽, Ph.D
参考文献
濱田太陽. 2024. 分散型科学が拓く新たなエコシステム:DeSci.Tokyoが果たす役割.
情報の科学と技術. 74 巻 3 号 p. 86-91
