「マス向けのWeb3施策は時期早々だ」こんな話をネットワーキング中に聞いたのは最近のこと、一方で企業の活用事例は海外では実は増加傾向にあります。もちろん問題や課題が多々あるのは承知ですが事例を知って活用法を模索することでなにか見えてくるかもしれません。
一例として「Fnatic」というeSportsチームは10万人を超えるファンにNFTを活用した施策を実施し、マスに対してのNFTの有用性を示す結果になりました。そんな成功例の一つを一緒に見ていきましょう。
Fnaticは、2014年に設立されたロンドンを拠点とするeSportsチームで、各部門に世界トップの選手を擁する強豪です。中には日本人が所属する部門などもあり、日本と関係性が深いチームでもあります。
最近だと日本で開催されたValorantというFPSタイトルの世界大会VCTで優勝するなど、これまで200回以上の大会優勝な遂げており、数々の実績を残しています。
アメリカの経済紙フォーブスが発表した2022年に最も価値のあるeスポーツ企業トップ10にもランクインしており、2.6億ドルの価値があるとされています。

2022年3月、Fnaticはゲーマー向けの新しいブロックチェーンを活用したメンバーシッププログラムのリリースを発表しました。
このメンバーシップはNFTを活用されて設計されており、コミュニティをより活性化させ、ユーザーが関心のある報酬や機能を提供する重要なツールとなっています。
FnaticのメンバーシップはPIONEER、CORE、CITIZENの3つのプランがあり、それぞれのユーティリティが異なります。
FnaticはメンバーシップNFTを準備する過程で、ファンに対してDiscordとRedditでアンケートを実施しました。このアンケートではNFTに対する好意的な反応を得ただけでなく、コミュニティが望んでいるユーティリティを知ることができました。このアンケート結果をもとにカスタムジャージやサイン入りグッズ、デバイスが入った戦利品ボックス、プロチームとの交流会などの特別な特典が用意されました。
これらの特典の中にはコストがかかるものが多く、有料プランでしか受け取ることができないものが多いですが、無料プランも用意されており、商品への早期アクセスやショップの5%割引コード、コミュニティやファンイベントへの独占アクセスの特典がついています。

PIONEERの発行量が935、COREの発行量が333であり、これらの売上を合わせると約9300万円と少なくない額となっています。
またCITIZENは所有者人数が16万人を超えるなど多くの人が所有しており、取得難易度が高くないことがわかります。
Fnaticのほとんどのファンは非クリプトネイティブ(Web3ウォレットを保持していない)ため、NFT等の施策を打つには数多くのハードルがありました。どのようにしてこれらのハードルを下げたのかを見ていきましょう。
まず非クリプトネイティブの人に対するアプローチで課題に上がるのがウォレット問題です。数多くのウォレットサービスは、解説はもちろん、アプリケーションとして独立しており、アセット管理が難しい問題がありました。
FnaticはVenlyを活用して、SNSの連携だけで簡単に作成し、従来のものと変わらないUXでNFTを利用できるようにしています。
もう一つ非クリプトネイティブの人がNFTを購入する障壁となるのが、ペイメントになります。従来のペイメントまでの流れは、取引所通して数多くの工程を行わなければなりませんでした。しかし、Paperを活用することでクレジットカードを使用して法定通貨でNFTを購入できるようにしました。
これらのサブスクリプションに近いモデルは今までも数多くありましたが、なぜNFTを活用したのでしょうか?NFTを活用するメリットは主に3つ挙げられます。
これまでのデジタルデータは簡単にコピーや改ざんが行えたため、会員登録やログインに利用することが難しく、利用することができませんでした。
しかし、ブロックチェーン技術を利用することで、保有者や取引履歴などの情報が記録され、不正使用を防ぐことができます。
従来のメンバーシップのモデルでは、基本的にメンバーシップを「レンタル」するという形で行われていました。
このモデルは毎月の支払いをやめると、投資したお金はすべて消えてしまい、経験やその期間に得られたものだけになります。
NFTを活用することで、完全に所有できるようになり、Openseaなどのマーケットプレイスで売買することができるようになりました。
そのため、不要になった段階で売却することができるようになり、購入に対するハードルが下がっています。
NFTは上限発行数を決めることができるため、NFTを保有するファンは特別感を感じられ、チームに対する愛着や親密度といったエンゲージメントを高めることが可能です。
さらにキーを保持する人数は決まっているため、請求期間を使用して、最初からメンバーシップ プログラムにより多くの価値を約束することができます。
これらのエンゲージメントが高まれば、NFTを転売することなく保有し続ける可能性が高くなるため、流動性が低くなりNFT会員権の希少価値がさらに上がる可能性もあります。
Fnaticは主にホームページを活用してコミュニティからの意見を積極的に取り入れ、ファンのエンゲージメントを高めています。

FnaticのHP内にRedditのようなスレッド機能がついているディスカッションできるスペースがあります。このディスカッションスペースでは、チームについて幅広い議論が行われています。
このディスカッションはアクティブ率が高く、盛り上がっているスレッドでは300コメントを超えるなど、盛り上がりを見せています。
これらのスペースには、ジェネラルチャンネルの他、Members限定チャンネル、AMAチャンネル、プロダクトのチャンネルや各部門のチャンネルが用意されています。
ここで行われているディスカッションには実際に選手や運営からのフィードバックが返ってくるなど、運営や選手と密に関わる事ができます。
またFnaticはkampsiteを活用してDAOのプロポーザルのようなフォーラムを作成しています。
このサイトには数多くのプロポーザルが作成され、ユーザーの意見が反映されてきました。
たとえば、チームのモバイルアプリが欲しいというプロポーザルが作成され、250を超える賛成票が集まり、実際にアプリが実装されました。このほかにもホームページに機能が実装されたりするなどユーザーの意見が直に反映されています。

FnaticのホームページではGoogleやTwitter、Emailなどでアカウントを作成し、コミュニティに参加する事ができます。
アカウントのプロフィールページには、メンバーシップNFTが表示されるだけでなく、連携したSNS、ファン歴などのステータスがわかるバッジ機能がついています。これらのバッジやNFTはDiscordと連携する事でDiscordの方にもロールが付与される仕組みとなっており、権限の管理などにも活用されています。
実際にディスカッションする際などにもその人がコミュニティで何をしていてどのようなバックグラウンドがあるかがわかるのでこれらの議論の手助けにもなります。
また選手や各ゲーム部門をフォローする事ができ、ライブ配信や試合などの最新情報を受け取る事ができます。

先程のKampsiteの章で軽く触れましたが、Fnaticはユーザーの要望からスマホアプリを作成しました。このアプリでは、試合や選手Twitterなどの最新情報を受け取れるだけでなく、ディスカッションや大会などの配信を見ながらライブチャットを行うこともできます。
FnaticのホームページにはそのほかにもTwitch(ライブ配信プラットフォーム)でライブ配信している所属選手やストリーマーの情報や試合情報、Youtubeの動画などが載っており、ECが併設されています。これらの機能のほとんどはファンからの要望から実装されており、今後もニーズに合わせて機能が追加されていくでしょう。
Fnaticは、NFTを活用しながらもクレジット決済などの手段を使い、その存在を感じさせないUXでコミュニティを構築し、非クリプトネイティブのファンにも使われています。
彼らはディスカッションできるスペースを設けてファンの要望を取り入れ、NFTのユーティリティやホームページ、アプリなどに多くの機能を実装しています。これにより、ファンはさまざまな方法でFnaticと関わることができ、エンゲージメントを高めています。
また彼らはウェブサイト内にディスカッションスペースを設けることで、ファンだけでなく興味を持っている人々もコミュニティの熱量を感じることができます。
Fnaticの様々な取り組みは彼らのファンに寄り添う姿勢を物語っており、チームとしてのあるべき姿なのかもしれません。
参考
Fnatic Kampsite
筆者のSNS
筆者がメンバーとして入っている株式会社woorthでは「無限の価値を見つけて伸ばす、妥協しないweb3施策を。」をコンセプトにWeb3、Blockchain領域でリサーチやアドバイザリーなど幅広く支援しております。些細なことでも大丈夫なのでお気軽にお問い合わせください。お問い合わせはこちらから。

