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農業を、地域のケアとして考える

園芸療法とケアファームのエビデンス

畑を耕す。種をまく。植物を育て、収穫する。

農業や園芸には、身体活動だけでなく、自然との接触、他者との交流、生活リズム、役割、達成感といった複数の要素が含まれます。

では、農業には医療・介護上の効果があるのでしょうか。

現在の研究では、抑うつや不安、身体機能を改善する可能性が示されています。ただし、効果が確立したとまではいえません。 農業を治療法として捉えるよりも、地域に役割や関係、居場所をつくる複合的なケアとして考えるのが妥当です。

園芸療法とケアファームは分けて考える

農業を医療・介護に活用する研究は、主に二つに分かれます。

一つは、植物の栽培や手入れを構造化された治療プログラムとして行う園芸療法(horticultural therapy)です。

もう一つは、農場での栽培、動物の世話、森林管理、共同作業などを、精神保健、障害福祉、高齢者支援、就労支援に活用するケアファーミング(care farming)です。

ランダム化比較試験やメタ分析が比較的多いのは園芸療法であり、実際の農場全体を用いるケアファーミングのエビデンスは限られています。

高齢者の抑うつには改善の可能性

高齢者の抑うつに対する園芸療法を検討した2023年の系統的レビュー・メタ分析には、13研究、698人が含まれました。

統合解析では抑うつ症状の改善が示されましたが、研究間の異質性は非常に大きく、I²は97%でした。影響の大きい研究を除外しても異質性は残りました。

対象者、活動内容、実施場所、頻度、比較群が研究ごとに異なるため、効果の方向性は期待できても、効果量を安定して推定することは難しいという結果です。

精神科入院患者を対象としたRCT

2024年には、精神科病棟の成人211人を対象としたランダム化比較試験が報告されました。

通常治療に園芸療法を追加した群では、通常治療のみの群と比較して、4週間後の不安症状が改善しました。対象には気分障害、精神病性障害、不安障害などが含まれていました。

一方で、介入の性質上、参加者や支援者の盲検化は困難です。園芸そのものの効果と、集団活動、人との交流、病棟外で過ごす経験などの効果を分離することもできません。

園芸療法は単一の治療成分ではなく、複数の要素からなる複合介入として評価する必要があります。

家庭菜園と身体機能

2024年には、50歳以上のがんサバイバー381人を対象に、1年間の家庭菜園介入を評価したランダム化比較試験が報告されました。

主要評価項目である野菜・果物の摂取、身体活動、身体機能の複合指標には有意差がありませんでした。

一方、2分間ステップテストや30秒椅子立ち上がりテストなど、一部の身体パフォーマンスと主観的健康状態には改善がみられました。

家庭菜園によって健康全般が大きく改善したわけではありませんが、生活のなかに継続的な活動を組み込むことで、特定の身体機能を支えられる可能性があります。

ケアファームの根拠はまだ弱い

ケアファーミングを検討したCampbell Collaborationの系統的レビューには、定量研究13件と定性研究18件が含まれました。

定量研究では、QOLを改善する明確な根拠は得られませんでした。抑うつや不安についても、改善の可能性が示される段階にとどまっています。

一方、定性研究では、参加者が農場での活動を通じて、達成感、所属感、人とのつながりを得ていることが繰り返し報告されています。

医学的アウトカムによる効果は未確立でも、参加者にとって意味のある経験が生まれている可能性があります。

農業の何が作用しているのか

農作業には、次の要素が同時に含まれます。

身体活動、自然環境への接触、生活リズム、共同作業、植物や動物の世話、成果の可視化、収穫物を食べたり他者に渡したりする経験です。

農業は、運動療法、自然への接触、社会参加、作業療法、食事、役割形成を組み合わせた複合介入と考えられます。

研究上は、どの要素が効果を生んだのか分離しにくいという課題があります。地域ケアでは、こうした複数の要素が同時に働くこと自体に意味があるとも考えられます。

「治療」よりも「役割」をつくる

現在のエビデンスから、農業が標準治療に代わるとはいえません。

入院、要介護化、医療費、薬剤使用、死亡などの重要なアウトカムも十分に検証されていません。対照群の設定、介入内容の標準化、長期追跡にも課題があります。

農業の価値は、疾患指標の改善だけではありません。

医療や介護を受ける人も、畑では、水をやる人、草を取る人、育て方を教える人、料理する人、運ぶ人になれます。

支援される側に固定されていた人が、小さくても何かを担う側へ移る。その変化は、通常の医療・介護サービスだけでは生まれにくいものです。

地域で小さく実装し、評価する

農業を活用した地域ケアは、完成した治療法を導入するというより、地域で小さく試しながら効果と課題を確かめる領域です。

実装する際には、対象者と目的を明確にし、参加前後の抑うつ、孤独感、身体機能、社会参加、QOLなどを測定します。継続率、安全性、支援者の負担、費用も評価する必要があります。

同時に、

「外に出る理由ができた」

「自分を待っている人がいる」

「収穫したものを誰かに渡せた」

といった生活上の変化も記録していくべきでしょう。

農業に万能な治療効果があるわけではありません。

それでも、身体、心理、社会的関係を同時に動かし、地域のなかに役割を生み出す場にはなりえます。

農業は薬ではありません。

農業は、地域にケアを実装する一つの方法です。

参考文献

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    https://www.nature.com/articles/s41598-024-65168-0

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  5. Murray J, Wickramasekera N, Elings M, et al. The impact of care farms on quality of life, depression and anxiety among different population groups: A systematic review. Campbell Syst Rev. 2019;15:e1061.
    https://www.campbellcollaboration.org/review/impact-of-care-farms-on-quality-of-life-different-population-groups/


※ 本記事ではAIを情報収集・編集に使用しています。掲載する研究データ、臨床的解釈は医師が確認し、最終編集しています。

編集 bycomet|Small Medicine