Dr. bycomet
世界的に高齢化が進むなか、多くの人々が「できるだけ長く自宅で健康に暮らしたい」と願っています。在宅医療は、こうした願いを実現するための有力な手段と考えられていますが、その実際の効果や影響については十分なエビデンスが求められています。
そこで、今回は在宅医療が患者の予後や生活、医療費にどのような影響を与えるのかについて、最新の研究成果を確認しておきましょう。
この研究(メタ分析)は、急性期入院が必要とされる患者を対象に、自宅での治療が入院治療と比較してどのような影響を与えるかを調査したものです。
死亡率(6か月後):リスク比(RR)0.88(95%CI: 0.68~1.13、中等度の確実性)
再入院率(3〜12か月後):RR 1.14(95%CI: 0.97~1.34、中等度の確実性)
施設入所リスク(6か月後):RR 0.53(95%CI: 0.41~0.69、中等度の確実性)
患者の自己申告による健康状態には有意な差なし
医療費は病院入院よりも在宅医療が安価である傾向(費用差:215〜1981英ポンド、GBP、1 GBP ≒ 1.25 USD、2024年現在)
高齢者に焦点を当てた研究で、入院回避型の自宅治療が患者のアウトカムに大きな差をもたらさない可能性がある一方で、満足度を向上させ、介護施設への移動の可能性を低減し、費用を削減する可能性があることを示しています。
高齢患者に対する入院回避型在宅医療は、死亡率や再入院率にほとんど影響を与えず、施設入所のリスクを低減し、患者満足度を向上させる可能性があります。また、医療コスト削減にも寄与する可能性が示唆されました。
参加者
20のRCT(ランダム化比較試験)に参加した合計3100人の患者。対象は主に高齢者で、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、脳卒中回復期、急性疾患(感染症、心不全増悪など)を有する患者を含む。
介入
入院回避型在宅医療(Admission avoidance hospital at home)。医療専門職が患者の自宅で急性期治療を提供する。
比較
通常の入院医療(inpatient care)
アウトカム
主要アウトカム: 6か月後の死亡率、3~12か月後の再入院率
副次アウトカム: 施設入所率、患者の自己報告による健康状態、患者満足度、医療従事者・介護者の満足度、入院期間、医療コスト、臨床的転帰
研究デザイン
システマティック・レビューおよびメタアナリシス(Cochrane Database of Systematic Reviews)
結果
6か月後の死亡率に有意な差はなし(RR 0.88, 95% CI 0.68–1.13; P = 0.30, 5試験, 1502人)
3~12か月後の再入院率に有意な差はなし(RR 1.14, 95% CI 0.97–1.34; P = 0.11, 8試験, 1757人)
6か月後の施設入所率が低下(RR 0.53, 95% CI 0.41–0.69; P < 0.001, 4試験, 1271人)
患者の自己報告による健康状態にはほぼ影響なし(9試験, 2006人)
患者満足度の向上(8試験, 1812人, 低確実性エビデンス)
入院期間の短縮(11試験, 2036人, 低確実性エビデンス)
医療コストの削減(12試験, 2148人, 中等度の確実性エビデンス)
文献
Edgar K, Iliffe S, Doll HA, Clarke MJ, Gonçalves-Bradley DC, Wong E, Shepperd S. Admission avoidance hospital at home. Cochrane Database Syst Rev. 2024 Mar 5;3(3):CD007491. doi: 10.1002/14651858.CD007491.pub3. PMID: 38438116; PMCID: PMC10911897.
この研究(メタ分析)は、高齢者を対象とした予防的介入が、日常生活動作や自己評価健康度にどのように影響するかを検討しています。
日常生活動作(ADL)スコアの改善:SMD 0.21(95%CI: 0.01~0.40)
自己評価健康度(SRH)の改善:OR 1.17(95%CI: 1.01~1.37)
ケア提供場所を在宅に変更すると入院が23%減少(IRR 0.77、95%CI: 0.63~0.95)
患者教育によって入院が26%減少(IRR 0.74、95%CI: 0.56~0.97)
この研究は、プライマリケアの予防的介入が高齢者のQOL向上に寄与する可能性を示しており、特に代替的なケア提供方法や教育の重要性を強調しています。
予防的なプライマリケア介入は、高齢者の日常生活動作と自己評価の健康度(SRH)には有益ですが、他のアウトカムには効果がみられません。
参加者
2009年から2019年に発表された18のランダム化比較試験(RCT)を対象(22報の論文に相当)。対象は主に65歳以上の高齢者。
介入
・非疾患特異的なプライマリケア介入
・訪問診療、電話相談、患者教育、医療従事者教育、ケアプランの作成などを含む
比較
・通常のケア(standard care)
アウトカム
・医療利用(入院、介護施設入所)
・機能的能力(基本的日常生活動作 [ADL])
・自己評価健康(SRH)
研究デザイン
・システマティックレビューおよびメタアナリシス(18のRCTを解析)
結果
介入の全体的な医療利用への影響は見られなかった(入院率や介護施設入所率の減少なし)。
機能的能力(ADL)の向上
介入群では、基本ADLスコアが有意に向上(標準化平均差[SMD] 0.21、95%信頼区間[CI] 0.01–0.40)。
自己評価健康(SRH)の改善
介入群はSRHを肯定的に評価する確率が17%高かった(オッズ比[OR] 1.17、95% CI 1.01–1.37)。
ケア提供の設定変更が有効
訪問診療や電話相談を含む介入は、入院率を23%低下(IRR 0.77、95% CI 0.63–0.95)。
患者教育が有効
患者教育を含む介入では、入院率が26%低下(IRR 0.74、95% CI 0.56–0.97)。
基本ADLスコアの向上(SMD 0.28、95% CI 0.09–0.48)。
医療従事者教育の影響
医療従事者教育を含む介入は、基本ADLの向上(SMD 0.21、95% CI 0.01–0.40)、SRHの向上(OR 1.27、95% CI 1.05–1.55)を示したが、医療利用には影響を及ぼさなかった。
文献
Palapar L, Blom JW, Wilkinson-Meyers L, Lumley T, Kerse N. Preventive interventions to improve older people’s health outcomes: systematic review and meta-analysis. Br J Gen Pract. 2024; Online First. DOI: 10.3399/BJGP.2023.0180.
この研究(メタ分析)は、個別化ケアプランなど、多面的な介入が高齢者の自立生活維持にどの程度有効かを評価しています。
在宅生活維持率(12か月後):個別ケアプラン+薬剤レビュー+定期的フォローアップによりやや向上(オッズ比 1.22、95%CI: 0.93~1.59、中等度の確実性)
日常生活動作(IADL):個別ケアプラン+薬剤レビュー+定期フォローアップにより、手段的ADL(instrumental ADL)がわずかに改善(SMD 0.11, 95% CI 0.00–0.21, 中程度の確実性)
高齢者の自立を維持するためには、個別ケアプランによる多面的介入(特に薬剤最適化と定期的なフォローアップ)が有効である可能性が高い。一部の介入は逆に自立を低下させる可能性があるため、個別化された介入の最適な組み合わせを明らかにするさらなる研究が必要である。
129のランダム化比較試験(RCT)の参加者(74,946名、平均年齢65歳以上、自宅で生活)
多面的介入(multifactorial action)
個別ケアプランの作成
定期的なフォローアップ(routine review)
薬剤レビュー(medication review)
栄養サポート(nutritional support)
認知トレーニング(cognitive training)
身体運動(exercise)
標準ケア(available care)
ホームケア(formal homecare)
他の複合介入
主アウトカム
自宅での生活維持(living at home)
日常生活動作(ADL: Activities of Daily Living)の維持
施設入所率(care home placement)
医療・経済的指標(service/economic outcomes)
系統的レビューおよびネットワークメタアナリシス(NMA)
結果
自宅での生活維持
「個別ケアプラン+薬剤レビュー+定期フォローアップ」は、自宅での生活維持率をわずかに改善する可能性がある。(OR 1.22, 95% CI 0.93–1.59, 中程度の確実性)
「認知トレーニング+薬剤レビュー+栄養+運動」や「ADL訓練+栄養+運動」も生活維持に貢献する可能性があるが、確実性は低い。
「リスクスクリーニング」や「教育+自己管理戦略」を追加した介入は、逆に生活維持の可能性を低下させる可能性がある。(OR 0.41, 95% CI 0.14–1.17, 低確実性)
日常生活動作(ADL)
「個別ケアプラン+薬剤レビュー+定期フォローアップ」が、手段的ADL(instrumental ADL)をわずかに改善する。(SMD 0.11, 95% CI 0.00–0.21, 中程度の確実性)
一方で、長期的にはADLがわずかに低下する可能性がある。
その他の結果
施設入所率に関するエビデンスは確実性が低い。
一部の介入は入院リスクを低減する可能性がある。
経済的評価では、「個別ケアプラン+薬剤レビュー+運動」などが費用対効果の観点で有望。
文献
Crocker TF, Ensor J, Lam N, et al. Community based complex interventions to sustain independence in older people: systematic review and network meta-analysis. BMJ. 2024;384:e077764. doi:10.1136/bmj-2023-077764.
これらの研究結果から、在宅医療は適切な方法で実施すれば高齢者が自宅で安全かつ健康的に暮らし続けるために有効な手段となることが分かりました。特に、個別化されたケアプラン、定期的なフォローアップ、患者や医療者への教育的サポートを組み合わせることで、患者の自立性を高め、医療コストの削減にもつながる可能性が示されています。
しかし、患者の特性(例えば、年齢、健康状態、家族や介護者の支援状況)により、最も効果的な介入が異なるため、今後は個別のニーズに合わせた在宅医療モデルを確立することが重要です。
Edgar K, Iliffe S, Doll HA, Clarke MJ, Gonçalves-Bradley DC, Wong E, Shepperd S. Admission avoidance hospital at home. Cochrane Database Syst Rev. 2024 Mar 5;3(3):CD007491. doi: 10.1002/14651858.CD007491.pub3. PMID: 38438116; PMCID: PMC10911897.
Palapar L, Blom JW, Wilkinson-Meyers L, Lumley T, Kerse N. Preventive interventions to improve older people's health outcomes: systematic review and meta-analysis. Br J Gen Pract. 2024 Mar 27;74(741):e208-e218. doi: 10.3399/BJGP.2023.0180. PMID: 38499364; PMCID: PMC10962503.
Crocker TF, Ensor J, Lam N, Jordão M, Bajpai R, Bond M, Forster A, Riley RD, Andre D, Brundle C, Ellwood A, Green J, Hale M, Mirza L, Morgan J, Patel I, Patetsini E, Prescott M, Ramiz R, Todd O, Walford R, Gladman J, Clegg A. Community based complex interventions to sustain independence in older people: systematic review and network meta-analysis. BMJ. 2024 Mar 21;384:e077764. doi: 10.1136/bmj-2023-077764. PMID: 38514079; PMCID: PMC10955723.
※この記事はAI・医師共創型コンテンツ(APCC)です。
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編集長 byc
2007年 ブログ・ツイッターで活動を開始。2015年 ウェブマガジン「地域医療ジャーナル」(有料会員数 10,886人月)、2018年 オンラインコミュニティ「地域医療編集室」(登録会員数 40人)運営。
2022年からオンラインプラットフォーム「小さな医療」(登録会員数 120人)運営。地域医療に携わる医師・編集長として、エビデンスに基づく医療の実践と情報発信をつづけています。
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