日本では今後、高齢化によって医療や介護の需要が増える一方、それを支える働き手は減っていきます。
とくにプライマリ・ケアや訪問診療では、85歳以上の高齢者、認知症のある人、独居の人、複数の慢性疾患を抱える人が増えることが予想されます。
患者が増えるたびに医師や看護師を増やし、診療所を大きくし、設備を追加する。これまでのような拡大型の方法だけでは、いずれ限界が訪れます。
では、医療の質を保ちながら、限られた人員と財源で医療を持続させるには、どうすればよいのでしょうか。
必要なのは、医療者の賃金を下げたり、診察時間を機械的に短くしたりすることではありません。
同じ、あるいはより良い健康アウトカムを、より少ない移動、検査、処方、待機、事務作業で実現することです。
医療を安売りするのではなく、過剰な部分を減らし、小さくても質の高い医療へ組み替えていく。そのために、プライマリ・ケアと訪問診療の現場で始められる10の方法を考えます。
多くの診療所では、月ごとの売上やレセプト件数を確認しています。しかし、患者1人にどれだけの医師時間、職員時間、検査、薬剤、移動が投入されているかは、十分に把握されていません。
最初に行うべきことは、医療の提供に使われている資源を測ることです。
訪問診療であれば、次のような項目を記録します。
1患者あたりの診療時間
診療録や書類の作成時間
移動時間
臨時往診の回数
救急搬送や予定外入院
処方薬剤数
定期検査の頻度
最初から完璧なシステムを作る必要はありません。まず50人、あるいは100人の患者について測るだけでも、改善すべき場所が見えてきます。
医療を小さくするためには、まず、医療がどこで大きくなっているのかを知る必要があります。
今後、すべての患者を1人の医師が継続して診続けることは難しくなります。
一方で、担当医が頻繁に変わり、診療方針が共有されていなければ、検査や処方が重複し、患者や家族の不安も増えます。
必要なのは、「1人の主治医」から「継続性のある小さなチーム」への転換です。
患者ごとに担当医、看護師、事務・調整担当者をある程度固定し、次の情報を共有します。
現在の問題リスト
治療目標
患者本人の希望
家族や生活の状況
急変時の対応方針
入院を希望する条件
自宅で対応する範囲
重要なのは、毎回必ず同じ医師が診察することだけではありません。
誰が対応しても、同じ情報と方針が引き継がれることです。
医療資源を有効に使ううえで、最も即効性があるのは、不要な医療を減らすことです。
ただし、単に「検査をしない」「薬を出さない」と決めるだけでは、患者の不安や医療者のリスクが増えてしまいます。
必要なのは、「しない医療」を診療所全体で標準化することです。
たとえば、次のような場面が考えられます。
かぜに対する抗菌薬
非特異的腰痛に対する早期画像検査
無症候性細菌尿に対する抗菌薬
慢性蕁麻疹に対する網羅的なアレルギー検査
安定した慢性疾患への過頻回な血液検査
高齢者への漫然とした睡眠薬や胃薬
ここでは、検査や処方を控える基準だけでなく、患者への説明、再診の目安、注意すべき症状、経過観察の方法までをセットにします。
必要なのは、医師が「検査をしないことを説明できる自由」と「処方しないことを説明できる自由」を取り戻すことです。
医師不足への対策として、医師を増やすことだけを考えていては間に合いません。
まず、医師が行っている業務を分解する必要があります。
診察前の問診、服薬確認、検査結果の整理、書類の基礎情報入力、診療録の下書き、定型的な療養説明などは、必ずしもすべてを医師が行う必要はありません。
看護師、薬剤師、医療事務、診療補助者、デジタルツールを組み合わせることで、医師は次の業務に集中できます。
診断
治療方針の決定
リスク判断
患者との意思決定
最終的な処方確認
医師の仕事を減らすことは、医療の質を下げることではありません。
医師にしかできない仕事へ、医師の時間を戻すことです。
デジタル化というと、すべての診察をオンライン診療へ置き換えることが想像されがちです。
しかし、実際に重要なのは、診療そのものをオンライン化することより、診療と診療の間を遠隔で支えることです。
たとえば、次のような方法があります。
診察前のオンライン問診
自宅血圧や体重の事前送信
看護師による電話確認
皮膚症状や創傷の写真共有
検査結果説明のオンライン化
訪問看護師同席での遠隔診療
安定している患者は遠隔で確認し、対面診療が必要な患者へ医療資源を集中させます。
オンライン診療を対面診療の安い代用品と考えるのではなく、必要な人へ対面診療を届けるための補助手段として使います。
訪問診療で最も大きな非効率の一つは、移動です。
医師が車に乗っている間は、診察も説明もできません。訪問範囲が広がるほど、患者数が増えても、診療に使える時間の割合が下がることがあります。
そのため、訪問診療は広域型から地域密度型へ変える必要があります。
訪問範囲を小さな地域に分ける
曜日ごとに訪問地域を固定する
同じ町丁目や集合住宅をまとめて訪問する
新患導入日と定期訪問日を分ける
遠距離患者は地域の医療機関と連携する
ルート最適化ツールを利用する
目標は、単純に訪問患者数を増やすことではありません。
移動を減らし、診療、説明、対話に使える時間を増やすことです。
慢性疾患が安定している患者と、急変リスクの高い患者を、同じ頻度、同じ方法で診療する必要はありません。
患者をリスク別に分類し、診療の強度を変えます。
低リスク患者には、定期訪問と遠隔フォローを組み合わせます。
中リスク患者には、看護師による中間確認を加えます。
高リスク患者には、短い診療間隔、緊急時対応計画、レスキュー薬、家族教育を準備します。
終末期の患者には、ACP、夜間の連絡方法、救急搬送を行う条件、自宅で対応できる範囲を事前に共有します。
訪問診療を導入するだけでは、入院や救急搬送が自動的に減るわけではありません。
誰に、どの程度の医療を届けるのかという設計が必要です。
各診療所が個別に24時間対応を行うと、医師、看護師、電話回線、マニュアル、当番体制が重複します。
この仕組みは、小規模な診療所ほど大きな負担になります。
今後は、地域の複数医療機関が協力し、次の機能を共同化することが必要です。
夜間休日の電話受付
共通トリアージ
当番医制度
患者情報の共有
連携病院への入院ルート
翌朝の引継ぎ
すべての機能を自前で保有することが、必ずしも質の高い医療ではありません。
共同で持った方が持続しやすい機能は、地域全体で共有すべきです。
高齢者の診療では、薬剤が徐々に追加され、いつの間にか10剤、15剤となっていることがあります。
複数の医療機関から似た薬が処方されていることも珍しくありません。
処方薬が増えるほど、薬剤費だけでなく、転倒、せん妄、腎機能障害、食欲低下などの有害事象も増えます。
診療所では、3か月から6か月ごとに減薬レビューを行います。
とくに確認すべきなのは、次のような薬です。
睡眠薬
抗コリン薬
NSAIDs
胃薬
ビタミン剤
漫然と継続されている外用薬
腎機能に対して過量な薬
目的が不明確になった予防薬
薬剤師と協働し、減薬候補の抽出、医師による確認、患者への説明、減薬後のフォローまでを定型化します。
処方を増やすことだけでなく、処方を減らすことも医療です。
これからの診療所に必要なのは、必ずしも大きな建物や高価な設備ではありません。
必要なのは、小さな拠点でも、安全に質の高い医療を提供できる共通の運営システムです。
これを「診療OS」と呼ぶことができます。
診療OSには、次のようなものが含まれます。
疾患別の診療プロトコル
問診や説明のテンプレート
タスク分担表
訪問ルートの設計
緊急時対応計画
採用と研修の仕組み
質と資源投入量の指標
安全管理と監査の手順
画像検査、専門検査、夜間対応、電話受付、請求事務などは、必要に応じて外部や地域で共有します。
すべてを所有する診療所ではなく、必要な機能へ適切に接続できる診療所を目指します。
ここまで10の方法を挙げましたが、最初からすべてを始める必要はありません。
最初の3か月で行うことは、次の5つで十分です。
患者100人について、診療時間、移動時間、検査、薬剤、入院を測る
頻度の高い5疾患について「しない医療」の基準を作る
医師の業務を棚卸しし、3つの業務を他職種へ移す
訪問患者の住所を地図化し、訪問ルートを見直す
急変リスクの高い患者に、緊急時対応計画を作る
最初に、新しいシステムや高価な機器を購入する必要はありません。
まず知るべきなのは、医師や職員の時間が何に使われ、どこで失われているかです。
医療を持続可能にするために、診療を粗末にする必要はありません。
不要な部分を減らし、本当に必要な診療、説明、対話に時間を戻す。
大きな医療を維持するのではなく、小さくても質の高い医療を、地域の中に数多くつくる。
それが、将来の医療需要の増大に備えて、今から始められるSmall Medicineの実践です。
Simply smaller.
※この記事はAI共創型コンテンツです。
■ AI
コンテンツ生成:ChatGPT 5.6
■ bycomet
医師。2007年からブログ/Xで発信を続けています。2015年に「地域医療ジャーナル」を創刊し、2018年にオンラインコミュニティ「地域医療編集室」を設立。2022年からプラットフォーム「小さな医療」を運営し、エビデンスに基づく地域医療の実践と言葉を届けています。

