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Invent & Wander──ジェフ・ベゾス(メモ)

本書は、ベゾスが1997-2019年まで書いてきた株主レターと、講演会やインタビューのベゾスの発言をまとめたもの。唯一のベゾスが自ら語ったものをまとめた本らしい。

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以下、メモ

1. 顧客第一主義

値下げとコスト構造改善の循環

顧客体験改善の打ち手の中でも最もお金がかかったのは、配送料無料のサービスと継続的な商品値下げ。欠陥を排除し、生産性を上げ、その結果削減されたコストを値下げというかたちでお客様にお返しすることは、長期的な意思決定。長い目で見たときにこの「値下げとコスト構造改善の果てしない循環」を何があっても推し進めることによって、事業はより強く、より価値の高いものになる。

フォードも藁のハンドルの中で、とにかくコストを下げてそれで出た利潤でさらなる改善と、顧客には値下げで・従業員には賃金で還元することで企業は繁栄するという主旨のことを書いていた。

値下げは実は数字に反している

効率性と規模拡大によって、毎年継続的かつ大胆にお客様のために値下げを行っていくと決めている。

この決定は、数字に基づくやり方で決められない、重要な意思決定の一例。じつのところ、値下げは定量的な分析に反している。数字をもとにすれば、値上げを行うことが賢い決定だという答えが出る。

だが、価格弾力性についての定量分析は短期的なものでしかない。5年後、10年後、またはその先に、継続的な値下げがこの事業にどう影響するかは、定量的にわかるものではない。徹底的な効率化とスケールメリットの追求によってお客様に値下げをすることで好循環が生まれ、長期的には莫大なフリーキャッシュフローが生み出されてアマゾンの価値が大幅に上がる。

ワーキング・バックワーズ

お客様のニーズを起点に「さかのぼって考える(ワーキング・バックワーズ)」という哲学は、「スキルを起点にして考える」やり方とは対照的。スキル起点の姿勢とは、既存のスキルと能力を使って事業機会を広げるというもの。つまり、「私たちが得意なのはXである。Xを使ってほかにどんなことができるだろう?」という考え方が、スキル起点の哲学。たしかにそれも事業姿勢として有効で割に合うもの。だが、既存のスキルはいずれ時代遅れになる。お客様のニーズを起点にさかのぼって考えることにより、いやでも新しい能力を身につけ、これまでに使わなかった筋肉を使わざるを得なくなる。

2. 事業

理想の事業アイデア4つの特徴

お客様に愛されていること。巨大な規模に拡大できること。投下資本に対するリターンが高いこと。そして長期にわたって、つまり数十年という期間にわたって継続できるということ。

ビジネスのリターンの特性上大胆な賭けが大切

投資に対して100倍のリターンが得られる確率が10パーセントあるとしたら、かならずその賭けに乗るべき。それでも、10回挑戦して、9回は失敗することになる。いつもフェンス超えを狙っていれば、三振も増えるが、ホームランも何本かは打てる。

ただし、ビジネスと野球は違い、野球の場合は結果が切断分布になる。バットを振ったとき、どれほど遠くに飛ばしても得点できるのは4点まで。ビジネスであれば、打席に立つことで、ほんのたまにではあるが1000点挙げることも可能。このように、ビジネスではリターンの分布がロングテールであるからこそ、大胆な賭けが大切になる。大勝ちすれば、たくさんの実験のもとが取れる。

フリーキャッシュフローの最大化

ベゾスは1997年の株主の手紙で「決算報告の見栄えをよくするか、将来キャッシュフローの現在価値を最大化するかの二者択一を迫られたら、キャッシュフローを選びます」と答えるほどキャッシュフローを重視している。

他にも、「私たちにとっての究極の財務指標、つまり長期成長の最大の原動力だと考える指標は、一株当たりフリーキャッシュフロー」とも。

なぜ、他の多くの企業のようにまず何よりもいちばんに、利益や一株当たり利益、または利益成長に目を向けないのか。その理由は、利益はキャッシュフローに直接換算できるものではなく、株式の価値は将来キャッシュフローの現在価値であって、将来利益の現在価値ではないから。

アマゾンのフリーキャッシュフローは主に、営業利益を伸ばし、運転資本と設備投資を効率的に管理することによって成長する。営業利益を伸ばすために、顧客体験をあらゆる面で改善することに力を注いで売上を伸ばし、コスト構造を絞り続けることに尽力。

3. 意思決定

意思決定は2タイプある

スピードと発明を遅らせる原因は全ての意思決定を同じやり方で行うから。

意思決定には影響が深刻で取り返しのつかないもの、またはあとで元に戻すのがかなり難しいものがある。そうした片道切符の決定は、順を踏んで注意深くゆっくりと、さまざまなことを考慮し検討したうえで行わなければならない。この手の意思決定を「タイプ1」と呼ぶ。

一方で、ほとんどの意思決定は変えられるし、もとに戻すこともできる。往復切符がある。この手の「タイプ2」の決定については、それが間違っていたと気づいたら、そこに留まる必要はない。タイプ2の決定は、判断力のある個人や少人数のチームが素早く下せるし、そうすべき。

情報が70%の状態で意思決定する

たいていの意思決定は、ほしいと思う情報の 70 パーセント程度しか手に入らない時点で下さなければならない。 90 パーセントの情報が手に入るまで待っていたら、だいたい遅い。どちらにしろ間違った判断については、早く気づいて正せるようにしておかなければならない。軌道修正が得意なら、間違った判断をしても浅い傷ですむかもしれないが、判断が遅れた場合は確実に大きな代償を払うことになる。

反対してもコミット

「反対してもコミットする」を合言葉にする。そうすれば、たくさんの時間を節約できる。みんなが賛成してくれなくても、自分の提案に自信があれば「みんな、反対意見があるのはわかるけど、ここは僕に賭けてくれませんか? 反対でもコミットしてもらえませんか?」と言う。話がここまで来ているときは、おそらく正解は誰にもわからなくなっているはずなので、みんなもすぐに賛成してくれる。

上司と部下とで意見が分かれることがある。部下はあるやり方がいいと信じ、上司は別のやり方を貫きたいと思っている。 そうしたときは、上司が「反対してもコミット」すべきケースのほうが多い。

ベゾスはしょっちゅう「反対してもコミット」している。何時間も、何日も、ときには何週間も意見を戦わせることもある。そのうえで言う。 「よし、私はこの案には絶対反対だが、君たちのほうが私より現場のことをわかっている。君たちのやり方でやってくれ。あとになって『そら見たことか』なんて決して言わないと約束するから」と。

ただお互いの意見が違っていただけで、正直に自分の意見を言い、彼らに自分の意見を考える機会を与えたうえで、彼らのやり方を心から支えるとすぐに伝える。

4. 組織・社内文化

2つの社員向けのユニークなプログラム

1つは「キャリアチョイス」という飛行機の整備士や看護師など人手不足の分野でスキルを身に着ける場合は学費の95%を前払いするもの。Amazonと関係ない分野でOK。2つ目は「ペイ・トゥー・クイック」という年に一度、社員に、辞めるならお金を支払うと提示するもの。初年度は2000ドル。次年度以降は毎年1000ドルずつ上乗せされ、上限5000ドルまで続く。「お願いなのでこの話に乗らないでください」というのがキャッチフレーズで。

なぜ、そんな話を持ちかけるのか?それはこの機会に、自分が本当に何をしたいのかを考えてもらうため。自分が働きたくない場所にいることは、長い目で見ると社員にとっても会社にとっても健全ではないから。

5. 原則

ベゾスの有名な後悔最小化のフレームワーク

80歳になってその判断を振り返ったときに、どう思うかを想像してみる思考実験。このフレームワークで考えて、インターネットに飛び込んだ。

変わらないことにフォーカス

「今後 10 年で何が変わると思いますか?」という問いではなく、もっと重要な「今後 10 年で変わらないものは何か?」という問いで考える。この問いは非常に重要。なぜなら、変わらないものを中心に計画を立てることができるから

たとえば、 10 年経っても、低価格がお客様に支持されるのは間違いない。それは変わらない。配達も速いほうがいいに決まっている。品揃えも多いほうがいい。ということは、これらのことに心血を注げば、これからも見返りがある。

才能は簡単、優しさは選択

ベゾスが祖父に言われた言葉「ジェフ、賢いよりも優しいほうが難しいんだ。いつかおまえにもわかるときがくる」。

才能と選択は違う。頭のよさは持って生まれた才能。優しさは選択。才能は簡単。生まれついてのものだから。選択は難しい。うっかりしていると才能に溺れてしまう。そうなると、おそらく選択を誤ってしまう。

小ネタ

データと同じくらい直感を重視

アマゾンプライムのアイディアを検討していた頃、財務チームに費用対効果の分析をさせると、とんでもなく割に合わなかった。しかし、「リスクを取るべきときもある。野性の勘も必要だ。そうしたものがあってはじめて優れた判断ができる。そしてグループで議論して判断する。謙虚な姿勢が必要だ」ということでスタートした。

ベゾスが子どもの頃に憧れていたビジネスマン

エジソンとウォルト・ディズニー。「昔から発明家と発明に興味があった」と。

ベゾスの両親は起業するときに10万ドルを提供

ベゾスは投資してもらう時、「7割の確率で、投資資金をすべて失ってしまうかもしれない」と両親には伝えた。それでも普通の人より3倍くらいは成功する確率は高いという前提で。さすがの自信。追加投資を入れて6%所有するまでになった。

感想

ベゾスの考えや試みは徹底的に基本に忠実で、例えばフリーキャッシュフローを重視する理由も「株式の価値は将来キャッシュフローの現在価値だから」という教科書のような理由。

社員向けの「ペイ・トゥー・クイック」プログラムも、本来なら働きたくない場所にいるのは社員も会社もお互い長期的には健全でないというあまりに正しい論だが、通常は離職率など目に見える指標を気にして、目の前の現実や建前から目を背けてしまう。価格を下げ続けるのもつい利益への誘惑に負けそうになりそうなもの。「反対してもコミットする」も自分では間違っていると思う意見に賛同することでありそれは怖さがあるし、小さなプライドなど感情的な面でも簡単ではない。

しかしベゾスは臆面もなく、建前やプライド、短期的な視野から逃れ、それぞれ合理的正しさ、ときに直感的正しさから実行する。ベーシックな考えも学んだと同時に、”ベーシックに正しいこと”を実行することの難しさも痛感した。

https://twitter.com/yu8muraka3