2023年に発表された系統的レビューによると、褥瘡に対する陰圧創傷療法(Negative Pressure Wound Therapy: NPWT)は、通常のケアと比較して有効性、安全性、受容性について検証が不足しています。
合計327人の褥瘡患者(主にIII期またはIV期の患者)
陰圧創傷療法(NPWT)
標準的なドレッシング療法、湿潤療法、または他のドレッシング法
主アウトカム: 褥瘡の完全治癒率、治癒までの時間、有害事象
副アウトカム: 創面サイズの変化、疼痛、ドレッシング交換の頻度、コスト、患者の生活の質
ランダム化比較試験 (RCT) を対象とした系統的レビュー
8つの研究(327人)を含む。ほとんどの研究はサンプルサイズが小さく、報告されたアウトカムのエビデンスの確実性は非常に低い。
NPWTは、創面サイズの縮小や疼痛軽減に寄与する可能性があるが、結果は不確実。
完全治癒や治癒までの時間に関するデータはほとんど報告されていない。
Shi J, Gao Y, Tian J, Li J, Xu J, Mei F, Li Z. Negative pressure wound therapy for treating pressure ulcers. Cochrane Database Syst Rev. 2023 May 26;5(5):CD011334. doi: 10.1002/14651858.CD011334.pub3. PMID: 37232410; PMCID: PMC10218975.
褥瘡の概要:
褥瘡(英語ではPressure Ulcers、Bedsores)は、皮膚やその下の組織が局所的に損傷を受ける状態で、通常、長期間の圧力や摩擦、剪断によって引き起こされる。
主に骨突出部で発生しやすく、痛みや感染、生活の質の低下を引き起こす可能性がある。
褥瘡のリスク要因:
脊髄損傷や高齢、慢性疾患など、移動制限がある人々が特にリスクが高い。
栄養状態の悪化、皮膚の湿潤、免疫低下、浮腫、体重の過不足も関連がある。
治療法の現状:
ドレッシング、外科的再建、圧力の再分散、電気刺激など、褥瘡治療の選択肢は多岐にわたる。
陰圧創傷療法(NPWT)は、創傷治療技術として広く利用されており、創面から体液を吸引することで治癒を促進するとされる。
NPWTの作用メカニズム:
創面から体液を吸引し、感染性物質や滲出液を除去することで創傷を清浄に保つ。
創面を密閉し、創傷辺縁を引き寄せる効果があると考えられている。
NPWTの利点と課題:
利点: ドレッシング交換頻度の減少、創傷の清潔維持、悪臭軽減。
課題: 装置の騒音、患者の活動制限、創面の軟化や感染リスク増加の可能性。
本研究の必要性:
NPWTは広く使用されているが、その有効性と安全性についてはエビデンスが限られている。
高品質のランダム化比較試験による十分な評価が必要とされている。
日本褥瘡学会 (JSPU) ガイドライン(2016年版):
NPWTは、Stage IIIおよびIVの褥瘡に対し、サイズや深さを縮小するための早期補助療法として推奨。
推奨ランク: C1(臨床的に推奨可能だがエビデンスが限られる)。
英国国立医療技術評価機構 (NICE) ガイドライン(2014年、2018年更新):
NPWTは、通常のドレッシング交換頻度を減らす必要がある場合を除き、褥瘡治療に対して日常的に推奨しない。
推奨ランク: B(中程度の推奨)。
アメリカ内科学会 (ACP) ガイドライン(2015年版):
褥瘡治療の有効な治療法としてNPWTを推奨しない。
推奨ランク: 低い。
傷治癒学会 (WHS) ガイドライン(2015年更新):
NPWTは、通常の治療法で改善が見られないStage IIIまたはIVの褥瘡に使用を検討。
推奨ランク: 1(高い)。
欧州褥瘡アドバイザリーパネル (EPUAP) / 国立褥瘡諮問パネル (NPUAP) / パンパシフィック褥瘡諮問連盟 (PPPIA) ガイドライン(2019年版):
NPWTは、Category/Stage IIIおよびIVの褥瘡に対する早期補助療法として考慮。
推奨ランク: B(中程度の推奨)。
Wound, Ostomy and Continence Nurses Society (WOCN) ガイドライン(2016年版):
NPWTは、標準的なドレッシング療法と比較して、完全な創傷閉鎖を増加させる可能性があり、二次感染リスクが低いと記載。
このように、NPWTの使用に対する評価は一致しておらず、治療法として確立するには高品質な研究が必要とされています。本研究では、陰圧創傷療法の有効性、安全性、受容性について、ランダム化比較試験(RCT)を対象に系統的レビューを行い、その科学的根拠を評価することを目的としています。
サンプルサイズの小ささ:
各研究の参加者数が少なく、統計的な有意差を検出する力(パワー)が不足している。
アウトカムの不十分な報告:
完全治癒率や治癒までの時間、有害事象などの主要アウトカムのデータがほとんど報告されていない。
創面サイズの変化についても、長さや幅のみが報告され、面積としての一貫した測定が欠けている。
研究デザインのバイアスリスク:
一部の研究ではランダム化や盲検化が不十分であり、バイアスリスクが高いと評価されている。
介入内容や方法が不明確な場合がある。
追跡期間の短さ:
多くの研究が短期間(8〜24週間)の追跡にとどまり、褥瘡の完全治癒のような長期的なアウトカムを評価するには不十分である。
介入の多様性:
使用された陰圧創傷療法(NPWT)デバイスが研究ごとに異なり、結果の一貫性が損なわれている。
コストに関するデータの不足:
陰圧創傷療法のコスト効果に関するデータがほとんど報告されておらず、経済的評価が十分に行われていない。
アウトカム測定基準の不統一:
研究間で使用される評価基準や測定方法に一貫性がなく、結果を比較するのが困難。
出版バイアスの可能性:
研究の小規模性とアウトカムの不十分な報告により、出版バイアスの影響が排除できない。
治療条件の詳細な記載不足:
一部の研究では、具体的な治療手順や設定(例: 陰圧レベル、デバイス交換頻度)が明記されていない。
これらの限界を踏まえ、今後の研究では大規模で高品質なランダム化比較試験や、標準化されたアウトカム測定が求められると結論付けられています。
※情報収集・要約記事作成に生成AI(ChatGPT o1 pro mode)を活用しています。
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推奨ランク: B(中程度の推奨)。
コアアウトカムセットの欠如:
NPWTの有効性を評価するための標準化されたコアアウトカムセットが存在せず、結果の解釈が困難になっている。
Dr. bycomet