現在、ブロックチェーン上で提供されている金利は、そのほとんどが「今この瞬間の利回り」を示すものです。
たとえばETHのステーキングやレンディングで得られる利回りは、常に変動しており、将来の金利がどうなるかは事前には分かりません。
しかし金融の世界では、「1ヶ月後には年利○%、6ヶ月後には年利○%」といったように、先の利回りをある程度予測・前提にしたうえで商品が設計されるのが一般的です。
このような仕組みをオンチェーン上でも実現するためには、「期間ごとの利回りを示す信頼できる指標(ベンチマーク)」が必要です。
Treehouseが開発している DOR(Decentralized Offered Rate) は、そのような共通の金利の“ものさし”をブロックチェーン上で提供する仕組みです。
実世界では、LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)やSOFR(担保付き翌日物調達金利)のような「金利の基準」は、金融商品の中で使われています。実例を2つ挙げると
1.住宅ローン(変動金利型)
たとえば、銀行で家を買うためのローンを組むとします。
このとき「今の金利は SOFR+1.5% です」と言われたら
・SOFRが2.0%なら、自分が支払う金利は年3.5%
・SOFRが1.0%に下がれば、自分の金利も2.5%に減る
こんなふうに、SOFR(指標金利)を“物差し”にして、自分の金利が決まる仕組みです。
2.デリバティブ取引
銀行やヘッジファンドは、「将来の金利の上がり下がり」に賭けたり、リスクを調整したりするために?
・金利スワップ(固定金利と変動金利の交換)
・金利オプション(特定の金利水準を超えたら損得が出る)
といった取引をしますが、ここでもLIBORやSOFRを基準に計算されます。
つまり、ベンチマーク金利は「金利で成り立つあらゆる商品・契約の前提」として扱われてきたものでした。
一方で、イーサリアムやその他PoSチェーン上では、こうした「期間ごとの金利」や「共通のベンチマーク」がまだ存在していません。
TreehouseのDOR(Decentralized Offered Rate)は、上記のような用途をオンチェーン金融(DeFi)にもたらすことを目指しています。
DORは、イーサリアム版(今後Solanaなど他チェーンへも展開予定)の「SOFR」や「LIBOR」のようなもの。
ステーキング利回りやETHレンディング利率を、オンチェーン上で検証可能かつ分散的な仕組みによって生成する「金利のものさし」です。
・Treehouseで現在稼働しているレート
https://dor.treehouse.finance/data/treehouse/tesr
下記の4つのレートが今Betaテスト版として公開されており、リアルタイムに更新されます。私も記事を書くのにあたって、レートの参照が必要となるとここを利用しています。
TESR=$ETH のステーキングイールドの目安
EERR=EtherfiのEigen Restakingイールドの目安
TEBR=$ETHを借りるときにかかる金利の目安
ETHをLendingするときの金利の目安
DORは一体どのようにしてこうした金利を「分散的に」「信頼できる形で」形成しているのでしょうか?
DORは5つの役割から構成され成り立ちます。
Operator:特定のレートの統括する役割を担います。
Penalist:Treehouseのトークンをステーキングし、今後のレート予想をします、正確である場合はさらにリワードを獲得するし、逆に間違いがあった場合はペナルティとしてスラッシングの措置を受けます。
Referencers:このTreehouseによって確立したレートを一定の手数料のもとに実際に利用するプロジェクトのこと
Delegator:Penalistと違って、自分では能動的に予測をしませんが、特定のペナリストの予測に自分のトークンをデリゲートすることによって、「Penalistが儲かれば儲かる」アプローチを取る人
End User:TreehouseのDORを利用して立ち上げられるプロダクトを実際に利用する人
こうした設計をもとに、ベンチマーク金利をどのように活用していくのでしょうか。
① オンチェーン貸借(Lending & Borrowing)
DeFiでは、ETHを借りる金利がプロトコルごとにバラバラで、「その金利が高いのか安いのか」が分かりづらい問題があります。
たとえば、AaveでETHを年利4.5%で借りる時、TESR(基準金利)が3.2%だとわかっていれば、「この借入コストは妥当か?」を判断しやすくなります。
借り手:高すぎる金利を避けられる
貸し手:最低限の利回り目安が持てる
プロトコル:TESRをもとに合理的な金利設計が可能
つまりTESRは、“金利の物差し”として貸借市場の透明性と公平性を高める役割を果たします。
② オフチェーン貸借(OTC市場でのETH貸し借り)
TESRは、機関投資家やOTCトレーダーが行うETH貸借契約にも活用できます。現在、OTC市場では金利設定が非公開・非標準でブラックボックス化しがち。
TESRを導入することで、価格形成の基準が明確になり、DeFiとの接続性も高まる。
これはつまり、**DeFiと伝統金融(TradFi)をつなぐ“共通言語”**の役割をTESRが果たせることを意味します。
③ イールド系プロダクト(固定金利の設計)
TESRは、「将来のステーキング利回り」に関わるあらゆる商品設計の土台になります。
Staking Rate Swaps:ETHの利回りを固定⇔変動でスワップ
ETH Yield Forwards:将来の利回りをあらかじめ売買
これらはすべて、「共通の指標金利(=TESR)」があってはじめてプロダクトとして成り立ちます。
④「利回りの予測性」と「リスク管理」
DeFiや金融では、「将来いくらリターンが得られるか」を予測できることが非常に大切です。
たとえば
・ユーザーが1年後にどれだけ増えるのか分からないような商品に大金を預けたいと思うか?
・ローンを貸し出す側が、担保が十分かどうか判断できないとしたらどうなるか?
これが「予測性がない」状態であり、リスクを管理するのがとても難しいということです。
ETHステーキングの基準利回り」があると、次のような使い方ができます。
プロトコル開発者の場合
・TESRを参考にして、「年利3.2%」の固定利回り商品を設計。
・ユーザーに対して、安定したリターンの提供ができる。
リスク管理システム(清算エンジン)の場合
ETH担保でローンを出しているが、TESRが3.2%→1.8%に下がったら担保価値も下がるかも?
では「担保の清算基準」を再調整しよう。
→ 客観的な金利基準に基づいて清算ラインを判断できる。
今後の展望
DORはその第一歩として、まずはETHの利回りを公平かつ一貫性のあるベンチマークとして定義することに注力していますが、その構想はETHにとどまらず、将来的にはLPリターンやレンディング金利、さらにはRWAに至るまで、あらゆる資産クラスに対応したベンチマーク金利の枠組みとして拡張されていく予定です。
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