医師による診療の継続性が高いほど、患者の死亡率は低くなることが観察研究から示唆されました。
Continuity of care with doctors—a matter of life and death? A systematic review of continuity of care and mortality
全世界9カ国における、多様な年齢・疾患背景を持つ患者群(対象は一般診療医および専門医によるケアを受けた患者)
医師(一般診療医または専門医)による診療継続性の向上
このレビューに含まれた22の研究では、「診療継続性(continuity of care)」の評価方法が多様で、以下のような指標やアプローチが用いられていました。
🔹 代表的な継続性の評価指標(Table 1より)
指標名 | 説明 | 使用された研究数 | 備考 |
---|---|---|---|
UPC(Usual Provider of Care)指数 | 全診療のうち、もっとも頻繁に診療した医師の割合 | 10研究 | 最も一般的。値は0〜1で、1に近いほど高継続性。 |
CoC(Continuity of Care)指数 | 医師ごとの診療頻度の分散も加味 | 複数研究 | より包括的。UPCよりも複雑。 |
MMCI(Modified Modified Continuity Index) | CoCの変形。医師数と総診療数を加味 | 一部研究 | 継続性の「濃さ」を測る。 |
MCI(Modified Continuity Index) | 上記と類似 | 複数研究 | |
Herfindahl-Hirschman Index(HHI) | 市場集中度の評価に由来。診療の集中度を表現 | 数研究 | |
患者報告(Patient-reported continuity) | アンケートで「いつも同じ医師に診てもらっているか」など | 英国の3件の横断研究 | 主観的評価。医療者と患者の関係性をより反映する可能性あり。 |
医師訪問の有無(binary measure) | 退院後に家庭医が訪問したか否か(Brenerら) | 1研究 | 二値で簡易だが限定的。 |
喪失継続(Loss of continuity) | 医師との関係が中断されたかをみる(Cerovečkiら) | 1研究 | ネガティブな側面に着目。 |
複数の指標を比較した研究もあり(例:Bentlerら 2014)は、患者報告ベースと保険請求データベースに基づく継続性で結果が逆転することもありました。
継続性の測定期間は1日(入院中)〜17年と非常に幅広く、中央値は2年間でした。
多くの研究で、継続性スコアを連続変数またはカテゴリ変数(高 vs 低)として解析していました。
継続性の測定方法が研究ごとに異なるため、効果の大きさをメタ解析で統合することは困難でした。しかし、大多数の指標で「継続性が高いほど死亡率が低い」という傾向が一致していました。
診療継続性が低いまたは不十分な医療提供
死亡率(全死因死亡、または特定疾患関連死亡)
システマティックレビュー(メタアナリシスなし、観察研究のみ対象)
対象となった22件の研究のうち18件(81.8%)で、診療継続性の向上と死亡率の低下に有意な関連が認められた。
16件の研究では、全死因死亡率における死亡リスクの有意な低下が示された。
ハザード比やオッズ比の指標では、たとえばHoertelら(2014年)によると、完璧な継続性を持つ患者は不完全な継続性の患者に比べて死亡リスクが約47%減少(HR 0.53, 95%CI: 0.52–0.54)。
観察期間は30日から21年と幅広かったが、中央値は2.5年。
測定された診療継続性の方法は異なっており、最も多かったのは「Usual Provider of Care(UPC)指数」であった。
バイアスリスクは低いと評価されたが、逆因果性(病状悪化により継続性が低下する可能性)が一部で懸念された。
Pereira Gray DJ, Sidaway-Lee K, White E, Thorne A, Evans PH. Continuity of care with doctors—a matter of life and death? A systematic review of continuity of care and mortality. BMJ Open. 2018;8(6):e021161. doi:10.1136/bmjopen-2017-021161.
医療における「ケアの継続性(continuity of care)」は、患者と医師の繰り返しの接触を通じて築かれる信頼関係を指す。
ケアの継続性は、患者満足度の向上、健康行動の促進、医療助言への順守率の向上、入院率の低下と関連している。
科学的医療の進歩(例:ゲノム解析や感染理論)は主に物理的要因に基づくが、人間関係に関する研究は遅れている。
近年では医師との個人的な接触の重要性が軽視される傾向があり、非対面医療が推奨される意見もある。
ランダム化比較試験(RCT)は既存の長期的な人間関係を対象とするには不適切であり、観察研究が主な研究手法となる。
ケアの継続性が死亡率と関連するかを調べた研究が増加しており、本レビューではこの関連性を体系的に評価する。
主に 表1 に基づいて以下を確認:
年齢(A)
性別(B)
社会経済的地位・貧困・教育(D, E)
慢性疾患・併存疾患(G, K)
過去の医療利用歴(H, N, O)
喫煙・急性疾患・保険状況・婚姻状況(F, J, I, M)
診療所や病院の特性、地域(P, Q)
患者のヘルスリテラシー:医療機関の使い方に関する知識や能力
文化・宗教的価値観:医療アクセスや受療行動に影響
医師側の態度・共感性・コミュニケーション能力:継続性と独立に死亡率へ影響を及ぼす可能性
全研究が観察研究であり、因果関係の証明ができない(相関のみ)。
逆因果性(reverse causality):健康状態が悪化したために継続性が途切れた可能性(→死亡との誤解)
継続性の測定指標に統一性がなく、**研究間の不均一性(heterogeneity)**がある。
継続性の高低に対して臨床的な閾値が不明(どの程度が高い継続性か不明瞭)。
一部の研究では継続性と死亡率の測定期間が重なっており、時間的因果関係があいまい。
医師以外の職種との継続性(例:看護師、薬剤師)は除外されており、結果の一般化に限界あり。
出版バイアスの可能性:有意な結果を示す研究が出版されやすい。
一部研究では死亡率が主要アウトカムではなく、副次的に扱われていた。
ケアの継続性が高いと死亡率が低下するという観察研究の傾向が強く、一般的に小さいが有意な効果が示された。
死亡率低下の要因として、予防医療の受診率向上や治療アドヒアランスの改善が想定される。
患者は継続的に診てもらうことで医師の反応性を高く感じ、信頼関係が治療の質を高める。
専門医や精神科医、外科医においても継続性の効果が認められ、総合診療に限らない人間関係の価値が示唆された。
観察研究であることから確定的な因果関係は言えないが、多国籍で再現性のある関連である点が強調された。
技術的な進歩が進む中でも、人と人とのつながりの重要性が見直されるべきである。
全体としてのハルシネーションの確率:5%未満
情報はすべて原論文から抽出・整理しており、推測や創作は避けています。
最もハルシネーションの可能性が高い部分:
「調整されていない可能性がある因子」として挙げた「文化・宗教的価値観」や「ヘルスリテラシー」