チーム基盤型プライマリ・ケアへの登録は、退院後の救急外来受診率および死亡率の低下と関連し、再入院率には差がみられませんでした。
Team-based versus traditional primary care models and short-term outcomes after hospital discharge
2002年から2009年にケベック州で入院した高齢者または慢性疾患患者312,377人(620,656件の入院エピソード)
多職種によるチーム基盤型プライマリ・ケア(Family Medicine Groups: FMG)
概要:
ケベック州で2002年以降に導入された多職種によるチーム医療モデルです。
主な特徴:
構成メンバー: 6~12名の家庭医(GP)+1~2名の看護師
対象患者: 登録された「脆弱な患者(高齢者や慢性疾患患者)」
提供サービス:
症例管理(case management)
時間外診療や緊急対応
継続的・包括的なケアの提供
目的: プライマリ・ケアのアクセス・継続性・連携性の向上
政策的背景:
米国のPatient-Centered Medical Home(PCMH)モデルに類似し、患者中心のケアと地域包括ケアを目指した制度改革の一環として導入されました。
従来型の個人または小規模グループのプライマリ・ケア
概要:
FMG制度が導入される前から存在していた、ケベック州の標準的なプライマリ・ケア提供形態。
主な特徴:
構成: 単独の開業医、または少人数の医師による小規模診療所
看護師との協働: 基本的には行われない(多職種連携の体制はない)
対応時間や緊急対応: FMGに比べて制限がある
症例管理・フォローアップ体制: 限られている可能性が高い
退院後90日以内の以下を評価:
再入院率
救急外来受診率(再入院を伴わないものを含む)
死亡率
人口ベースのコホート研究(傾向スコアと逆確率重み付けを用いたマージナル構造モデルによる解析)
各患者は入院時点での登録プライマリ・ケア医の診療形態に基づき、FMG(介入群)または従来型(比較群)に分類されました。
解析には傾向スコアと逆確率重み付け(IPTW)を使用し、両群の背景因子(年齢・性別・疾患・地域等)をバランスさせています。
再入院率:30日以内の再入院率に有意差はなし(調整済み差:+1.2/1000、95%CI: -2.1~+4.5)
救急外来受診率(30日以内):チーム基盤型で低下(調整済み差:-4.2/1000、95%CI: -8.2~-0.2)
再入院を伴わない救急外来受診率(30日以内):チーム基盤型で有意に低下(調整済み差:-7.5/1000、95%CI: -10.8~-4.2)
死亡率(30日以内):チーム基盤型で低下(調整済み差:-3.8/1000、95%CI: -5.9~-1.7)
特に重症度が「非常に高い」群で死亡率の低下は顕著(-4.2/1000、95%CI: -5.3~-3.0、p < 0.001)
Riverin BD, Li P, Naimi AI, Strumpf E. Team-based versus traditional primary care models and short-term outcomes after hospital discharge. CMAJ. 2017 Apr 24;189(16):E585-E593. doi: 10.1503/cmaj.160427.
退院後の再入院や救急外来受診は医療費の増加とケアの質の低下に関与する。
米国では65歳以上の入院患者のうち約20%が30日以内に再入院し、25%が救急外来を受診する。
退院後の合併症や薬剤関連の有害事象が高齢者に多くみられ、再入院リスクが高い。
チーム医療や在宅支援を含むケア連携が不十分だと、退院後のアウトカムが悪化する。
救急外来受診は、ケア連携の不備を示す新たな指標としても提案されている。
従来の介入研究は小規模・局所的なものが多く、大規模なプライマリ・ケア改革の影響は未評価であった。
ケベック州では2002年からFamily Medicine Groups(FMG)という多職種連携型のプライマリ・ケア制度が導入された。
患者要因:
年齢、性別
入院時の疾患分類(Major Diagnostic Category)
地域の社会的・物質的剥奪指数
入院前の医療利用歴(入院回数、入院からの経過日数)
患者の罹患負荷(Resource Utilization Bandでの分類)
過去1年間の診療実績(診断コードベース)
地理的要因:
都市/郊外/農村の分類
近隣病院のレベル(第3次/第2次)
診療医の特徴:
性別、卒業年数、患者数、収入の出所(給与制・施設ベース等)
病院の固定効果:
入院先病院に対するダミー変数
患者の身体的機能やフレイル指標(例:ADLやIADL)
患者の社会的支援や家庭内の介護体制
退院時のケアプランの有無や質(例:訪問看護の有無)
患者の認知機能や精神状態(うつ病、認知症)
FMGにおけるチーム連携の質や地域差(制度導入のばらつき)
交絡の残存: 患者の機能レベルや疾患重症度に関する未測定因子が交絡として残っている可能性がある。
選択バイアス: FMGに登録された患者は、より健康状態が良好な場合があり得る(あるいは逆に重症例が集まりやすい可能性も)。
死亡と再入院の関係: チーム基盤型のケアが患者の延命につながり、結果として再入院率を増加させている可能性。
看護師の役割未把握: チームにおける看護師のフォローアップの実態がデータベースに含まれておらず、解析に反映できていない。
FMGの運用のばらつき: 多職種連携の実践レベルには地域や施設間で大きな差がある。
制度設計の限界: FMG制度では、退院患者に対する訪問看護などの連携機能が明示されていない。
外部妥当性: カナダ国外の制度との直接的比較は難しく、結果の一般化には注意が必要。
総合ハルシネーション確率: 2%未満(信頼性高)
最もハルシネーションの可能性が高い部分:
「FMG制度では、退院患者に対する訪問看護などの連携機能が明示されていない。」
理由:
本文にはFMG制度における「退院患者フォローに関する制度上の明文化」の有無までは明示されておらず、「早期フォローアップが推奨されるが制度として義務ではない」程度のニュアンスをやや推測を交えて解釈しているため。文脈上の正当化は可能だが、厳密には制度文書に依拠した明記ではない。