クリプト分野でトレンドが発生するものの条件にはいくつかある。
レギュレーションリスクが低いこと
Intangible(非物質的)なものをトークン化していること
効果的利他主義(社会貢献的な側面と投機的な側面が両方ある)なプロダクトであること
これまでクリプト分野でバイラルしたものは上記のような条件が当てはまる。
1.に関しては説明するまでもないが、レギュレーション上のリスクを人々が飲めるか飲めないかという話であり、このリスクが低いものほど採用されやすいというのは当然の話だが意外に言及されることは少ない。今までクリプト分野でトレンドになったものは実は証券性を回避しているもの、もしくは証券ではあるがきちんと手続きを踏んでいるものが多い。
2.に関しては投資/投機としての側面にもなるが、未だ価値がつけられてなかったものに投資ができるようになるということはアップサイドに無限の可能性があるということだ。誰もその適正価格/時価総額など分からないものに対して投資したくなるのがDegenとしての性質だ。
3.に関しては、社会貢献的な側面があることでそれが投資の火種になるようなイメージだ。その大義名分に共感して投資を行う人がイノベーター的であり、それに合わせてアーリーアダプターやアーリーマジョリティーが乗っかってくる。
また逆に、「期待されているがトレンドになっていないもの」は上記の条件に当てはまらない。例えばクリエイター/ソーシャルトークンは期待されているがトレンドになっていない。それは、1の証券性に触れてしまう可能性があるのと、2のIntagibleなものではないためだ。
それが証券であるかどうかを判断する方法としてHowey Testがある。以下の4条件を全て満たすものは証券とみなされる可能性が高い。
An investment of money (お金の投資であること)
In a common enterprise (投資先が共同事業であること)
With the expectation of profit (投資先から収益が見込めること)
To be derived from the efforts of others (他者の努力によって利益が得られるものであること)
(引用: https://www.investopedia.com/terms/h/howey-test.asp)
SECの解釈としては、ビットコインは4に該当しないため証券ではないとされている。特定のエンティティ(会社や団体)が存在し、そこがビットコインの相場に影響を与えている訳ではないため4の要件に当てはまらないとされている。要は、そのトークンを運営する主体が存在するかどうかという点にある。これは政府がそのトークンを「証券だ」と言って規制しようとしたところで誰に言ったらいいのか分からないよね、ということでもある。
例えばICOによって発行されるトークンはその運営主体が存在するため下火になった。しかし、そのトークン運営主体を機械であるAI Agentを中心に置くことによって、レギュレーションリスクを下げることが可能になる。政府はそのトークンを証券としようとしたところでAIにそれを伝えることになる。
これはVitalik(と私)がいうところのDAOの定義にもオーバーラップする。
"DAOs == automation at the center, humans at the edges. " (中心が自動化されていて、周りが人間)
AI AgentによるVenture Capitalであるai16zは中央がAIであるため、DAOの定義に当てはまる。数年前にあったDAOブームの時には、結局は人によって運営される組織ができただけだったため個人的にはDAOの定義からは外れるという理解をしていた。しかし、AIを中心に置くことでより本来のDAOに近づけることができるし、それは証券性の回避にもつながるということだ。
👇 #7 Incentive Orchestration の段落を参照して欲しい
次に、無形/非物質的なもののトークン化という側面だ。ミームコインやNFTを見ればわかるが、それらは現実世界のものと紐づかない。そして、今までだれもその適性価格など分からなかったものだった。
Virtualsなどに見るトークン化されたAI Agentはその条件にあてはまる。AI Agentの適正な価値など誰がわかるだろうか。しかし、そう言ったものこそDegenは投資したくなるのだ。
👇 #5 トークン中心の価値獲得メカニズムの段落を参照して欲しい
先にあげたai16zの掲げるスローガンは以下だ。
完全にAIによって運営される「次世代ベンチャーファンド」という革新的な試み
しかし、その実はただの投機商品だと思っている。
それがどうということではないが、クリプトにおいてこの健全(そう)なパッケージと、投機商品であるという中身の両立は重要である。AI Agentも多分に漏れずそれに当てはまるのである。
AI Agentをただのbot(+α)だと思うこともできる。NFTやトークンを買ってツイートをするbotだ。これは夢があまりないリアリスティックな解釈方法だと思うが、今のアツアツの市況を冷静に見るためには良い視点になる可能性がある。
これまでクリエイタートークンはカテゴリとしては存在していたが、トレンドになることはなかった。それは先に述べた証券性の観点やIntangibleの観点から難しかった。しかし、AIという仮想のクリエイター/主体を置くことでそれらが解決されたのだ。
つまり、AI Agentのブームはクリエイタートークンブームの代替だと捉えることもできる。
知りません。この業界にいて何度もXXブームを経験してますが、正直いつも形を変えたマネーゲームでしかないと思うことがあります。確かに今AI x Cryptoはホットなトピックですが、振り返った時にただ形を変えたマネーゲームで終わっていたら悲しいなと思います。
これをクリプトの人に言うと怪訝な顔をされる率100%です。
「投機から抜け出そう」とか「マスアダプション」とか言われてるのに、本当はみんなマネーゲームがしたいだけなんです。誰も世の中よりよくしよう、なんて思ってないんです。
AIの登場によって、我々は一つメタなゲームをプレイするようになりました。
喩えるなら、
今までマインクラフトのような一人称視点での街づくりゲームが、シムシティのようなシミュレーションゲームに変わってきているようなものです。
今まで、投資やツイートは人間が行ってきました。これは我々がクリプトを一人称視点でプレイしてきたと言うことです。しかし、AI Agentが出てきたことで、それらの活動を委任できるようになり、AIを操作するゲームに変わってきたのです。これはゲームが一人称視点からメタな視点に変わってきていると言うことです。
クリプトに限らず、何かを調査したり資料をまとめたりするときにはAIを使うようになりましたし、サービスを作るにしてもAIに作らせることができます。世界全体がメタゲーム化しつつあると言うことです。
クリプトというゲームを一つメタな視点でプレイする上でどんなことができるか考えてみるのもまた面白いと思います。
consome