
プレバンキングとは何か?
プレバンキングは、偽情報に触れる前に認識力を高めて「免疫」をつける手法です。本記事では、その仕組みや効果を簡潔に解説します。はじめに近年、インターネット上で流布する偽情報により、社会的混乱や不信が生じています。こうした状況に対抗する方法の一つとして注目されているのが「プレバンキング(prebunking)」です。これは、人々が偽情報に触れる前に、事前にその手口や特徴を学ぶことで、誤った情報を鵜呑みにしにくくする戦略とされています。プレバンキングの基本的な考え方プレバンキングは心理学の「予防接種理論(inoculation theory)」に基づきます。あらかじめ小規模な「誤情報の種」を提示し、その不自然さや詭弁を指摘することで、人々は後に本格的な偽情報に直面した際、批判的思考を働かせやすくなります。これにより、デマや陰謀論に流されにくくなり、情報を吟味する習慣が強化されます。研究事例と成果研究者らはプレバンキングの有効性を実験的に示しています。たとえば、Jigsaw(Google傘下の組織)はYouTube上でプレバンク動画を配信し、視聴者が後の偽情報に抵抗する力が高まることを報...

ChatGPT4+Paperpileは新たな時代の幕開けに
実用的なAI医療情報検索ツールについては記事にまとめたばかりですが、さらに続々と新たなツールが実装され、進化が止まりません。大規模言語モデルは医療情報検索に使えるか大規模言語モデルによる生成AIは徐々に日常業務に浸透しつつあると感じます。 これが情報検索にも使えれば鬼に金棒、一石二鳥なのですが、残念ながらまだそこまでの能力は身につけていないようです。LLaMaChat+Perplexity学術論文などの情報検索ツールではない、大規模言語モデルによる生成AIの実力についても調べています。 引用文献を明示するPerplexityが実装には一番近い存在かと感じていました。ここでは、さらに改良されたPerplexity Labsの LLaMa Chat を試して検証してみました。 プロンプトはこちらYou are a librarian. I am a researcher searching for up-to-date medical articles from around the world. Please provide me with the relevant informa...

虚弱高齢者の抗凝固薬は変えないほうがいい
2024年1月、心房細動のある高齢者に対する塞栓症予防として、ワルファリンなどのビタミンK拮抗剤(VKA)から非ビタミンK拮抗剤経口抗凝固薬(NOAC)に切り替えると、出血の合併症が69%多くなるというランダム化比較試験が発表されました。75歳以上の虚弱高齢者が対象参加者: 75歳以上でGroningen Frailty Indicatorスコアが3以上の虚弱な高齢心房細動患者 介入: ビタミンK拮抗剤から非ビタミンK拮抗剤経口抗凝固薬への切り替え 比較: ビタミンK拮抗剤の継続使用 アウトカム: 大出血または臨床的に関連する非主要出血の発生(主要アウトカム) 研究デザイン: プラグマティック多施設オープンラベルランダム化比較優越試験出血はNOACで69%多い結果:1330人がランダム割り付け対象主要アウトカムの発生率は、切り替え群で15.3%(101件)、継続群で9.4%(62件)ハザード比は1.69(95%信頼区間 1.23-2.32)血栓塞栓症はNOACで26%多い傾向主な結果は以下のとおり。血栓塞栓症の発症はNOACへ切り替えても少なくなりませんでした。 全死亡率に関して...
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プレバンキングとは何か?
プレバンキングは、偽情報に触れる前に認識力を高めて「免疫」をつける手法です。本記事では、その仕組みや効果を簡潔に解説します。はじめに近年、インターネット上で流布する偽情報により、社会的混乱や不信が生じています。こうした状況に対抗する方法の一つとして注目されているのが「プレバンキング(prebunking)」です。これは、人々が偽情報に触れる前に、事前にその手口や特徴を学ぶことで、誤った情報を鵜呑みにしにくくする戦略とされています。プレバンキングの基本的な考え方プレバンキングは心理学の「予防接種理論(inoculation theory)」に基づきます。あらかじめ小規模な「誤情報の種」を提示し、その不自然さや詭弁を指摘することで、人々は後に本格的な偽情報に直面した際、批判的思考を働かせやすくなります。これにより、デマや陰謀論に流されにくくなり、情報を吟味する習慣が強化されます。研究事例と成果研究者らはプレバンキングの有効性を実験的に示しています。たとえば、Jigsaw(Google傘下の組織)はYouTube上でプレバンク動画を配信し、視聴者が後の偽情報に抵抗する力が高まることを報...

ChatGPT4+Paperpileは新たな時代の幕開けに
実用的なAI医療情報検索ツールについては記事にまとめたばかりですが、さらに続々と新たなツールが実装され、進化が止まりません。大規模言語モデルは医療情報検索に使えるか大規模言語モデルによる生成AIは徐々に日常業務に浸透しつつあると感じます。 これが情報検索にも使えれば鬼に金棒、一石二鳥なのですが、残念ながらまだそこまでの能力は身につけていないようです。LLaMaChat+Perplexity学術論文などの情報検索ツールではない、大規模言語モデルによる生成AIの実力についても調べています。 引用文献を明示するPerplexityが実装には一番近い存在かと感じていました。ここでは、さらに改良されたPerplexity Labsの LLaMa Chat を試して検証してみました。 プロンプトはこちらYou are a librarian. I am a researcher searching for up-to-date medical articles from around the world. Please provide me with the relevant informa...

虚弱高齢者の抗凝固薬は変えないほうがいい
2024年1月、心房細動のある高齢者に対する塞栓症予防として、ワルファリンなどのビタミンK拮抗剤(VKA)から非ビタミンK拮抗剤経口抗凝固薬(NOAC)に切り替えると、出血の合併症が69%多くなるというランダム化比較試験が発表されました。75歳以上の虚弱高齢者が対象参加者: 75歳以上でGroningen Frailty Indicatorスコアが3以上の虚弱な高齢心房細動患者 介入: ビタミンK拮抗剤から非ビタミンK拮抗剤経口抗凝固薬への切り替え 比較: ビタミンK拮抗剤の継続使用 アウトカム: 大出血または臨床的に関連する非主要出血の発生(主要アウトカム) 研究デザイン: プラグマティック多施設オープンラベルランダム化比較優越試験出血はNOACで69%多い結果:1330人がランダム割り付け対象主要アウトカムの発生率は、切り替え群で15.3%(101件)、継続群で9.4%(62件)ハザード比は1.69(95%信頼区間 1.23-2.32)血栓塞栓症はNOACで26%多い傾向主な結果は以下のとおり。血栓塞栓症の発症はNOACへ切り替えても少なくなりませんでした。 全死亡率に関して...
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新型コロナウイルスワクチンを接種すると帯状疱疹発症が多くなる傾向がみられますが、せいぜい1万人あたり10人以下。
帯状疱疹による入院についても、100万人あたり7人多くなるという観察研究があります。
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンを接種すると、帯状疱疹が発症しやすくなるのではないか、という情報があります。
予防・害(有害事象)についての疑問です。
いくつかの観察研究・レビューが発表されています。最近のものを順を追って確認しておきましょう。
2022年1月、16歳以上の人のうち、新型コロナワクチンBNT162b2(Pfizer/BioNTech)を接種すると帯状疱疹発症は多くなったのかを検討した、イスラエルの後向きコホート研究が発表されました。
Shasha D, Bareket R, Sikron FH, Gertel O, Tsamir J, Dvir D, Mossinson D, Heymann AD, Zacay G. Real-world safety data for the Pfizer BNT162b2 SARS-CoV-2 vaccine: historical cohort study. Clin Microbiol Infect. 2022 Jan;28(1):130-134. doi: 10.1016/j.cmi.2021.09.018. Epub 2021 Sep 27. PMID: 34592420; PMCID: PMC8479307.
1回接種 233,159人、2回接種 131,033人。性別、年齢、人口部門(一般ユダヤ人、アラブ人、超正統派ユダヤ人)および併存疾患によってマッチングされた未接種 335,242人と比較されています。
平均観察日数は43±15.14日。
帯状疱疹発症
1回接種 151人(1万人年あたり55.2) 未接種 141人(1万人年あたり51.5人) 相対危険 1.07(95%信頼区間 0.85, 1.35)
2回接種 67人 未接種 61人 有意差なし
BNT162b2ワクチン1回接種後の帯状疱疹発症は1万人年あたり55.2と少なく、未接種でも同等の発症がみられました。
ここではワクチン接種後に帯状疱疹の発症が多くなるという、明確な関連は認められませんでした。
2022年2月、香港から大規模な観察研究の報告がありました。
入院した人のうち、新型コロナウイルスワクチン(CoronaVac, SinovacまたはBNT162b2, Pfizer/BioNTech)の接種は、帯状疱疹による入院につながっていたのかを検討した、観察研究です。
Wan EYF, Chui CSL, Wang Y, Ng VWS, Yan VKC, Lai FTT, Li X, Wong CKH, Chan EWY, Wong CSM, Leung KSM, Ni MY, Valkenburg SA, Peiris JSM, Wu JTK, Cowling BJ, Ashcroft DM, Hung IFN, Leung GM, Wong ICK. Herpes zoster related hospitalization after inactivated (CoronaVac) and mRNA (BNT162b2) SARS-CoV-2 vaccination: A self-controlled case series and nested case-control study. Lancet Reg Health West Pac. 2022 Apr;21:100393. doi: 10.1016/j.lanwpc.2022.100393. Epub 2022 Feb 2. PMID: 35128500; PMCID: PMC8808060.
この観察研究では、①自己対照ケースシリーズ(self-controlled case series; SCCS)、②コホート内症例対照研究(nested case-control study)の2つのデザインで検討されています。
データは香港特別行政区の法定行政機関として、43の公立病院、49の専門外来診療所、73のプライマリケア診療所を管理する病院局の臨床管理システムの電子医療記録を利用。患者ごとに非識別化された固有の識別子を用いてワクチン接種データとリンクさせています。2021年2月23日から7月31日までに、香港では合計3,227,186人がコロナワクチン接種を受けました。
2021年2月23日から2021年7月31日の間にCoronaVacおよびBNT162b2の1回目をそれぞれ接種した人は1,269,574人と1,957,612人。このうち、982,255人(77.4%)、1,451,858人(74.2%)がそれぞれCoronaVacとBNT162b2の2回目を接種しています。 合計でCoronaVacは2,251,829回、BNT162b2は3,409,470回接種されました。
2021年2月23日から2021年7月31日の間に帯状疱疹の診断で入院したのは657人。 CoronaVacおよびBNT162b2の初回または2回目の投与後28日以内に帯状疱疹の初回診断で入院したのは、それぞれ16人および27人の合計43人。
したがって、帯状疱疹による入院の発生率は、 CoronaVac投与100万回あたり7.1(95%CI:4.1〜11.5) BNT162b2投与100万回あたり7.9(95%CI:5.2〜11.5) となっています。
BNT162b2またはCoronaVacのワクチン接種を1回以上受け、2021年2月23日から7月31日の間に帯状疱疹の初回診断で入院した16歳以上の患者を解析対象としました。
ワクチン接種後0-13日、14-27日を曝露期間と設定し、それ以外のベースラインと発生数を比較しています。
帯状疱疹による入院 調整発生率比* (95%信頼区間)
CoronaVac (n=498) 1回目接種後0-13日 9人 1.61/人年 2.67 (1.08–6.59)14-27日 4人 1.40/人年 1.17 (0.34–3.97)2回目接種後0-13日 3人 0.89/人年 1.67 (0.54–5.23)14-27日 0人 0.67/人年 NA ベースライン 482人 212.21/人年 1.00
BNT162b2 (n=501) 1回目接種後 0-13日 11人 1.65/人年 5.23 (1.61–17.03) 14-27日 7人 1.08/人年 5.82 (1.62–20.91) 2回目接種後 0-13日 7人 0.94/人年 5.14 (1.29–20.47) 14-27日 2人 0.81/人年 1.56 (0.36–6.81) ベースライン 474人 213.61/人年 1.00
*Adjusted for seasonality by month, potential individual-level confounders such as age and sex are already accounted for by the self-controlled design
BNT162b2ワクチン1回目接種後、接種後14日後までのリスクが有意に高くなっています。
相対リスクが約5であることから、接種しない場合に比べて、BNT162b2を100万回接種するごとに帯状疱疹の入院が7件追加発生する可能性があると推論されます。
2021年2月23日から7月31日の間に帯状疱疹の初回診断で入院した16歳以上の患者を症例とし、同期間に入院し症例に含まれない患者を対照としました。
症例ごとにランダムマッチングを行い、性別、年齢、Charlson comorbidity index(0,1-2,3-4,≧5の同一グループ内)、受診日(3暦日以内)が同じ10人の対照を割り付け。
帯状疱疹の初診日またはそれ以前28日以内にワクチン接種を受けた症例と、入院日またはそれ以前28日以内にワクチン接種を受けた対照のみをワクチン接種者と定義しました。
554人の症例と4944人のマッチした対照を選定し比較。
帯状疱疹による入院 粗オッズ比・調整後オッズ比*(95%信頼区間)
1回目接種後 ワクチン未接種 症例 511人 対照 4490人 CoronaVac (0–13日) 症例 9人 対照 30人 2.78 (1.30–5.91)・3.44 (1.56–7.56) BNT162b2 (0–13日) 症例 11人 対照 39人 2.27 (1.14–4.51)・2.60 (1.29–5.25) ワクチン未接種 症例 511人 対照 4417人 CoronaVac (14–27日) 症例 4人 対照 34人 1.06 (0.37–3.00)・1.20 (0.41–3.47) BNT162b2 (14–27日) 症例 7人 対照 16人 3.46 (1.42–8.46)・3.93 (1.50–10.26)
2回目接種後 ワクチン未接種 症例 511人 対照 4416人 CoronaVac (0–13日) 症例3人 対照 32人 0.78 (0.24–2.58)・0.88 (0.26–2.96) BNT162b2 (0–13日) 症例 7人 対照 36人 1.63 (0.70–3.79)・2.01 (0.84–4.77) ワクチン未接種 症例 511人 対照 4347人 CoronaVac (14–27日) 症例 0人 対照 29人 NA・NA BNT162b2 (14–27日) 症例 2人 対照 21人 0.71 (0.16–3.04)・0.70 (0.16–3.14)
*Cases and controls were matched according to age, sex, admission date and Charlson Comorbidity index. Odds ratios for herpes zoster events were estimated by conditional logistic regression adjusted for smoking status, medical history (diabetes, hypertension, asthma, malignancy, respiratory infections, viral infections, rheumatoid arthritis and other inflammatory polyarthropathies, stroke or systemic embolism, Guillain-Barré Syndrome, migraine), and medication use in the past 90 days (antiviral drugs, glucocorticoids, antibacterial drugs, immune-suppressants, lipid lowering agents).
BNT162b2ワクチン接種は、初回接種後の帯状疱疹入院リスクと有意に関連していましたが、2回目接種後はそうではありませんでした。これは自己対照ケースシリーズと同様の傾向を示しています。
以上より、BNT162b2ワクチン初回接種後、帯状疱疹による入院は5倍となっていますが、100万回接種あたり7件程度多くなると考えられます。
ワクチンによって帯状疱疹による入院が増えるのは確かですが、そもそも発生数が少ないため、流行期ではメリットのほうが上回るだろう、ということになりそうです。
2022年2月、新型コロナウイルスワクチン接種は帯状疱疹発症の危険因子となるのかを検討した、システマティック・レビュー+メタ分析が発表されました。
Chu CW, Jiesisibieke ZL, Yang YP, Wu PC, Lin HL, Tung TH. Association of COVID-19 vaccination with herpes zoster: a systematic review and meta-analysis. Expert Rev Vaccines. 2022 May;21(5):601-608. doi: 10.1080/14760584.2022.2036128. Epub 2022 Feb 7. PMID: 35112938.
2021年12月25日までの関連研究を検索し、4件のコホート研究が採択されました。
プラセボ群に比べて、ワクチン接種群ではリスク比 1.06(95%信頼区間 0.91, 1.24)と明確な関連は認められませんでした。
2022年5月、新型コロナウイルスワクチン接種は帯状疱疹発症の危険因子となっていたかを検討した、大規模コホート研究が発表されました。
Hertel M, Heiland M, Nahles S, von Laffert M, Mura C, Bourne PE, Preissner R, Preissner S. Real-world evidence from over one million COVID-19 vaccinations is consistent with reactivation of the varicella-zoster virus. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2022 Aug;36(8):1342-1348. doi: 10.1111/jdv.18184. Epub 2022 May 13. PMID: 35470920; PMCID: PMC9114991.
データは大規模データベース TriNetX Global Health Research Network を活用。 (この民間データベースは2.5億人以上の診療データを収集しているようです。すごい!)
新型コロナウイルスワクチン接種者1,095,086人と年齢・性別で層別化し、1:1の傾向スコアマッチングした未接種者1,095,086人とを比較しています。
帯状疱疹発症
ワクチン接種(接種後60日以内) 2204人(0.201%) ワクチン未接種(受診後60日以内) 1223人(0.112%)
リスク差 0.09%(95%信頼区間 0.079, 0.1) リスク比 1.802(95%信頼区間 1.681, 1.932)
新型コロナワクチン接種で帯状疱疹発症は1.8倍多くなり、これは1万人あたり9人多く発症するということになります。
新型コロナウイルスワクチンを接種すると帯状疱疹発症が多くなる傾向がみられますが、せいぜい1万人あたり10人以下という小さな差に過ぎません。
帯状疱疹による入院についても、100万人あたり7人多くなるという観察研究があります。
小さな差を検証するには、大規模なデータベースが必要となります。
Shasha D, Bareket R, Sikron FH, Gertel O, Tsamir J, Dvir D, Mossinson D, Heymann AD, Zacay G. Real-world safety data for the Pfizer BNT162b2 SARS-CoV-2 vaccine: historical cohort study. Clin Microbiol Infect. 2022 Jan;28(1):130-134. doi: 10.1016/j.cmi.2021.09.018. Epub 2021 Sep 27. PMID: 34592420; PMCID: PMC8479307.
Wan EYF, Chui CSL, Wang Y, Ng VWS, Yan VKC, Lai FTT, Li X, Wong CKH, Chan EWY, Wong CSM, Leung KSM, Ni MY, Valkenburg SA, Peiris JSM, Wu JTK, Cowling BJ, Ashcroft DM, Hung IFN, Leung GM, Wong ICK. Herpes zoster related hospitalization after inactivated (CoronaVac) and mRNA (BNT162b2) SARS-CoV-2 vaccination: A self-controlled case series and nested case-control study. Lancet Reg Health West Pac. 2022 Apr;21:100393. doi: 10.1016/j.lanwpc.2022.100393. Epub 2022 Feb 2. PMID: 35128500; PMCID: PMC8808060.
Chu CW, Jiesisibieke ZL, Yang YP, Wu PC, Lin HL, Tung TH. Association of COVID-19 vaccination with herpes zoster: a systematic review and meta-analysis. Expert Rev Vaccines. 2022 May;21(5):601-608. doi: 10.1080/14760584.2022.2036128. Epub 2022 Feb 7. PMID: 35112938.
Hertel M, Heiland M, Nahles S, von Laffert M, Mura C, Bourne PE, Preissner R, Preissner S. Real-world evidence from over one million COVID-19 vaccinations is consistent with reactivation of the varicella-zoster virus. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2022 Aug;36(8):1342-1348. doi: 10.1111/jdv.18184. Epub 2022 May 13. PMID: 35470920; PMCID: PMC9114991.
新型コロナウイルスワクチンを接種すると帯状疱疹発症が多くなる傾向がみられますが、せいぜい1万人あたり10人以下。
帯状疱疹による入院についても、100万人あたり7人多くなるという観察研究があります。
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンを接種すると、帯状疱疹が発症しやすくなるのではないか、という情報があります。
予防・害(有害事象)についての疑問です。
いくつかの観察研究・レビューが発表されています。最近のものを順を追って確認しておきましょう。
2022年1月、16歳以上の人のうち、新型コロナワクチンBNT162b2(Pfizer/BioNTech)を接種すると帯状疱疹発症は多くなったのかを検討した、イスラエルの後向きコホート研究が発表されました。
Shasha D, Bareket R, Sikron FH, Gertel O, Tsamir J, Dvir D, Mossinson D, Heymann AD, Zacay G. Real-world safety data for the Pfizer BNT162b2 SARS-CoV-2 vaccine: historical cohort study. Clin Microbiol Infect. 2022 Jan;28(1):130-134. doi: 10.1016/j.cmi.2021.09.018. Epub 2021 Sep 27. PMID: 34592420; PMCID: PMC8479307.
1回接種 233,159人、2回接種 131,033人。性別、年齢、人口部門(一般ユダヤ人、アラブ人、超正統派ユダヤ人)および併存疾患によってマッチングされた未接種 335,242人と比較されています。
平均観察日数は43±15.14日。
帯状疱疹発症
1回接種 151人(1万人年あたり55.2) 未接種 141人(1万人年あたり51.5人) 相対危険 1.07(95%信頼区間 0.85, 1.35)
2回接種 67人 未接種 61人 有意差なし
BNT162b2ワクチン1回接種後の帯状疱疹発症は1万人年あたり55.2と少なく、未接種でも同等の発症がみられました。
ここではワクチン接種後に帯状疱疹の発症が多くなるという、明確な関連は認められませんでした。
2022年2月、香港から大規模な観察研究の報告がありました。
入院した人のうち、新型コロナウイルスワクチン(CoronaVac, SinovacまたはBNT162b2, Pfizer/BioNTech)の接種は、帯状疱疹による入院につながっていたのかを検討した、観察研究です。
Wan EYF, Chui CSL, Wang Y, Ng VWS, Yan VKC, Lai FTT, Li X, Wong CKH, Chan EWY, Wong CSM, Leung KSM, Ni MY, Valkenburg SA, Peiris JSM, Wu JTK, Cowling BJ, Ashcroft DM, Hung IFN, Leung GM, Wong ICK. Herpes zoster related hospitalization after inactivated (CoronaVac) and mRNA (BNT162b2) SARS-CoV-2 vaccination: A self-controlled case series and nested case-control study. Lancet Reg Health West Pac. 2022 Apr;21:100393. doi: 10.1016/j.lanwpc.2022.100393. Epub 2022 Feb 2. PMID: 35128500; PMCID: PMC8808060.
この観察研究では、①自己対照ケースシリーズ(self-controlled case series; SCCS)、②コホート内症例対照研究(nested case-control study)の2つのデザインで検討されています。
データは香港特別行政区の法定行政機関として、43の公立病院、49の専門外来診療所、73のプライマリケア診療所を管理する病院局の臨床管理システムの電子医療記録を利用。患者ごとに非識別化された固有の識別子を用いてワクチン接種データとリンクさせています。2021年2月23日から7月31日までに、香港では合計3,227,186人がコロナワクチン接種を受けました。
2021年2月23日から2021年7月31日の間にCoronaVacおよびBNT162b2の1回目をそれぞれ接種した人は1,269,574人と1,957,612人。このうち、982,255人(77.4%)、1,451,858人(74.2%)がそれぞれCoronaVacとBNT162b2の2回目を接種しています。 合計でCoronaVacは2,251,829回、BNT162b2は3,409,470回接種されました。
2021年2月23日から2021年7月31日の間に帯状疱疹の診断で入院したのは657人。 CoronaVacおよびBNT162b2の初回または2回目の投与後28日以内に帯状疱疹の初回診断で入院したのは、それぞれ16人および27人の合計43人。
したがって、帯状疱疹による入院の発生率は、 CoronaVac投与100万回あたり7.1(95%CI:4.1〜11.5) BNT162b2投与100万回あたり7.9(95%CI:5.2〜11.5) となっています。
BNT162b2またはCoronaVacのワクチン接種を1回以上受け、2021年2月23日から7月31日の間に帯状疱疹の初回診断で入院した16歳以上の患者を解析対象としました。
ワクチン接種後0-13日、14-27日を曝露期間と設定し、それ以外のベースラインと発生数を比較しています。
帯状疱疹による入院 調整発生率比* (95%信頼区間)
CoronaVac (n=498) 1回目接種後0-13日 9人 1.61/人年 2.67 (1.08–6.59)14-27日 4人 1.40/人年 1.17 (0.34–3.97)2回目接種後0-13日 3人 0.89/人年 1.67 (0.54–5.23)14-27日 0人 0.67/人年 NA ベースライン 482人 212.21/人年 1.00
BNT162b2 (n=501) 1回目接種後 0-13日 11人 1.65/人年 5.23 (1.61–17.03) 14-27日 7人 1.08/人年 5.82 (1.62–20.91) 2回目接種後 0-13日 7人 0.94/人年 5.14 (1.29–20.47) 14-27日 2人 0.81/人年 1.56 (0.36–6.81) ベースライン 474人 213.61/人年 1.00
*Adjusted for seasonality by month, potential individual-level confounders such as age and sex are already accounted for by the self-controlled design
BNT162b2ワクチン1回目接種後、接種後14日後までのリスクが有意に高くなっています。
相対リスクが約5であることから、接種しない場合に比べて、BNT162b2を100万回接種するごとに帯状疱疹の入院が7件追加発生する可能性があると推論されます。
2021年2月23日から7月31日の間に帯状疱疹の初回診断で入院した16歳以上の患者を症例とし、同期間に入院し症例に含まれない患者を対照としました。
症例ごとにランダムマッチングを行い、性別、年齢、Charlson comorbidity index(0,1-2,3-4,≧5の同一グループ内)、受診日(3暦日以内)が同じ10人の対照を割り付け。
帯状疱疹の初診日またはそれ以前28日以内にワクチン接種を受けた症例と、入院日またはそれ以前28日以内にワクチン接種を受けた対照のみをワクチン接種者と定義しました。
554人の症例と4944人のマッチした対照を選定し比較。
帯状疱疹による入院 粗オッズ比・調整後オッズ比*(95%信頼区間)
1回目接種後 ワクチン未接種 症例 511人 対照 4490人 CoronaVac (0–13日) 症例 9人 対照 30人 2.78 (1.30–5.91)・3.44 (1.56–7.56) BNT162b2 (0–13日) 症例 11人 対照 39人 2.27 (1.14–4.51)・2.60 (1.29–5.25) ワクチン未接種 症例 511人 対照 4417人 CoronaVac (14–27日) 症例 4人 対照 34人 1.06 (0.37–3.00)・1.20 (0.41–3.47) BNT162b2 (14–27日) 症例 7人 対照 16人 3.46 (1.42–8.46)・3.93 (1.50–10.26)
2回目接種後 ワクチン未接種 症例 511人 対照 4416人 CoronaVac (0–13日) 症例3人 対照 32人 0.78 (0.24–2.58)・0.88 (0.26–2.96) BNT162b2 (0–13日) 症例 7人 対照 36人 1.63 (0.70–3.79)・2.01 (0.84–4.77) ワクチン未接種 症例 511人 対照 4347人 CoronaVac (14–27日) 症例 0人 対照 29人 NA・NA BNT162b2 (14–27日) 症例 2人 対照 21人 0.71 (0.16–3.04)・0.70 (0.16–3.14)
*Cases and controls were matched according to age, sex, admission date and Charlson Comorbidity index. Odds ratios for herpes zoster events were estimated by conditional logistic regression adjusted for smoking status, medical history (diabetes, hypertension, asthma, malignancy, respiratory infections, viral infections, rheumatoid arthritis and other inflammatory polyarthropathies, stroke or systemic embolism, Guillain-Barré Syndrome, migraine), and medication use in the past 90 days (antiviral drugs, glucocorticoids, antibacterial drugs, immune-suppressants, lipid lowering agents).
BNT162b2ワクチン接種は、初回接種後の帯状疱疹入院リスクと有意に関連していましたが、2回目接種後はそうではありませんでした。これは自己対照ケースシリーズと同様の傾向を示しています。
以上より、BNT162b2ワクチン初回接種後、帯状疱疹による入院は5倍となっていますが、100万回接種あたり7件程度多くなると考えられます。
ワクチンによって帯状疱疹による入院が増えるのは確かですが、そもそも発生数が少ないため、流行期ではメリットのほうが上回るだろう、ということになりそうです。
2022年2月、新型コロナウイルスワクチン接種は帯状疱疹発症の危険因子となるのかを検討した、システマティック・レビュー+メタ分析が発表されました。
Chu CW, Jiesisibieke ZL, Yang YP, Wu PC, Lin HL, Tung TH. Association of COVID-19 vaccination with herpes zoster: a systematic review and meta-analysis. Expert Rev Vaccines. 2022 May;21(5):601-608. doi: 10.1080/14760584.2022.2036128. Epub 2022 Feb 7. PMID: 35112938.
2021年12月25日までの関連研究を検索し、4件のコホート研究が採択されました。
プラセボ群に比べて、ワクチン接種群ではリスク比 1.06(95%信頼区間 0.91, 1.24)と明確な関連は認められませんでした。
2022年5月、新型コロナウイルスワクチン接種は帯状疱疹発症の危険因子となっていたかを検討した、大規模コホート研究が発表されました。
Hertel M, Heiland M, Nahles S, von Laffert M, Mura C, Bourne PE, Preissner R, Preissner S. Real-world evidence from over one million COVID-19 vaccinations is consistent with reactivation of the varicella-zoster virus. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2022 Aug;36(8):1342-1348. doi: 10.1111/jdv.18184. Epub 2022 May 13. PMID: 35470920; PMCID: PMC9114991.
データは大規模データベース TriNetX Global Health Research Network を活用。 (この民間データベースは2.5億人以上の診療データを収集しているようです。すごい!)
新型コロナウイルスワクチン接種者1,095,086人と年齢・性別で層別化し、1:1の傾向スコアマッチングした未接種者1,095,086人とを比較しています。
帯状疱疹発症
ワクチン接種(接種後60日以内) 2204人(0.201%) ワクチン未接種(受診後60日以内) 1223人(0.112%)
リスク差 0.09%(95%信頼区間 0.079, 0.1) リスク比 1.802(95%信頼区間 1.681, 1.932)
新型コロナワクチン接種で帯状疱疹発症は1.8倍多くなり、これは1万人あたり9人多く発症するということになります。
新型コロナウイルスワクチンを接種すると帯状疱疹発症が多くなる傾向がみられますが、せいぜい1万人あたり10人以下という小さな差に過ぎません。
帯状疱疹による入院についても、100万人あたり7人多くなるという観察研究があります。
小さな差を検証するには、大規模なデータベースが必要となります。
Shasha D, Bareket R, Sikron FH, Gertel O, Tsamir J, Dvir D, Mossinson D, Heymann AD, Zacay G. Real-world safety data for the Pfizer BNT162b2 SARS-CoV-2 vaccine: historical cohort study. Clin Microbiol Infect. 2022 Jan;28(1):130-134. doi: 10.1016/j.cmi.2021.09.018. Epub 2021 Sep 27. PMID: 34592420; PMCID: PMC8479307.
Wan EYF, Chui CSL, Wang Y, Ng VWS, Yan VKC, Lai FTT, Li X, Wong CKH, Chan EWY, Wong CSM, Leung KSM, Ni MY, Valkenburg SA, Peiris JSM, Wu JTK, Cowling BJ, Ashcroft DM, Hung IFN, Leung GM, Wong ICK. Herpes zoster related hospitalization after inactivated (CoronaVac) and mRNA (BNT162b2) SARS-CoV-2 vaccination: A self-controlled case series and nested case-control study. Lancet Reg Health West Pac. 2022 Apr;21:100393. doi: 10.1016/j.lanwpc.2022.100393. Epub 2022 Feb 2. PMID: 35128500; PMCID: PMC8808060.
Chu CW, Jiesisibieke ZL, Yang YP, Wu PC, Lin HL, Tung TH. Association of COVID-19 vaccination with herpes zoster: a systematic review and meta-analysis. Expert Rev Vaccines. 2022 May;21(5):601-608. doi: 10.1080/14760584.2022.2036128. Epub 2022 Feb 7. PMID: 35112938.
Hertel M, Heiland M, Nahles S, von Laffert M, Mura C, Bourne PE, Preissner R, Preissner S. Real-world evidence from over one million COVID-19 vaccinations is consistent with reactivation of the varicella-zoster virus. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2022 Aug;36(8):1342-1348. doi: 10.1111/jdv.18184. Epub 2022 May 13. PMID: 35470920; PMCID: PMC9114991.
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