Share Dialog
2022年の横断研究によると、オンライン医療データベース「UpToDate」 「DynaMed」の寄稿者は、製薬会社や医療機器メーカーからの多額の報酬を受けており、これらの支払いはしばしば開示されていないことがわかりました。
米国の医師179人(男性72.1%、女性27.9%)
「UpToDate」と「DynaMed」に掲載された医学情報の寄稿者における利益相反(COI)の自己申告と産業界からの支払いの比較。
寄稿者の自己申告による利益相反開示と、米国医療・メディケアサービスセンター(CMS)のOpen Paymentsデータベースに記録された支払い。
主要アウトカム:自己申告による利益相反開示の有無と、Open Paymentsに記載された産業界からの報酬の一致率(または不一致率)
横断研究(cross-sectional study)
全体で179人の寄稿者が、産業界から合計7,770万ドルを受領。
UpToDate寄稿者128人のうち、59.4%が「何も開示するべきものはない」と報告したが、そのうち57.9%が実際には支払いを受けていた。
DynaMed寄稿者51人のうち、82.4%が「何も開示するべきものはない」と報告し、そのうち83.3%が支払いを受けていた。
男性寄稿者が報酬を受ける確率が高く、UpToDate寄稿者の女性は全体の報酬の2.5%しか受け取っていなかった。
上位10人の寄稿者は、UpToDateで総額5,610万ドル、DynaMedで総額8,880万ドルを受領していた。
VanDeMark SH, Woloszyn MR, Christman LA, Gatusky MH, Lam WS, Tilberry SS, Piper BJ. Examination of Potential Industry Conflicts of Interest and Disclosures by Contributors to Online Medical Resource Databases. JAMA Netw Open. 2022 Jul 1;5(7):e2220155. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2022.20155. PMID: 35788670; PMCID: PMC9257578.
以下は、この研究の背景に関する導入部分の要約を箇条書きで示します。
利益相反の定義:
利益相反(COI)は、一次的な利益(例: 患者の健康改善)が、二次的な利益(例: 経済的報酬)により不当に影響されるリスクがある状況を指す。
関連研究の不足:
医学書や診療ガイドラインの執筆者における利益相反は広く研究されてきたが、オンライン医療リソース(例: UpToDateやDynaMed)の寄稿者に関する研究は限られている。
UpToDateとDynaMedの重要性:
これらのプラットフォームは、医療従事者にエビデンスベースの診療支援を提供し、患者の健康改善を目指すオンライン情報源として広く利用されている。
利益相反開示の課題:
UpToDateとDynaMedの運営は、寄稿者の財務的な利益相反に関する情報を収集し、年次でレビューしているが、その開示状況の正確性が課題として挙げられている。
利益相反データの公表:
アメリカ医療・メディケアサービスセンター(CMS)のOpen Paymentsデータベースは、製薬会社や医療機器メーカーから医師への支払い情報を公開しており、利益相反の透明性向上を目指している。
本研究は、UpToDateおよびDynaMedの寄稿者の自己申告による利益相反開示状況と、Open Paymentsデータベースに記録された支払い情報を比較し、その一致率や不一致率を調査することを目的としています。
以下は、この研究の考察部分で述べられている限界を箇条書きでまとめたものです。
サンプルサイズの制約:
米国ベースの寄稿者179人に限定されており、UpToDateやDynaMed全体の寄稿者数(UpToDateだけで7300人以上)に対して非常に小規模なサンプルである。
寄稿者選定の偏り:
対象は、米国の「主要死因トップ50」に関連する記事の寄稿者に限定されており、他の疾患領域や非米国寄稿者に関する一般化は難しい。
タイムラインの不明確さ:
CMSのOpen Paymentsデータベースは支払いの日付を含むが、UpToDateやDynaMedには寄稿者が利益相反を開示した正確なタイムラインが記載されていない。
利益相反の分類の制約:
製薬会社や医療機器メーカーからの支払いが、寄稿者の記載内容にどの程度影響を与えたかを直接評価していない。
関連性の誤解の可能性:
ある分野で支払いを受けた医師が、異なる分野の記事を執筆していた場合、利益相反がない場合でも「不一致」と分類される可能性がある。
データの正確性の限界:
Open PaymentsデータベースやDollars for Docsデータベースにおける支払い記録が完全でない可能性があり、それに依存した結果に誤差が含まれる可能性がある。
性別の偏りの影響:
寄稿者の性別構成が男性に偏っており(全体の72.1%が男性)、女性寄稿者が少数であることが結果に影響を与えた可能性がある。
他のリソースへの適用性:
UpToDateやDynaMed以外の医療情報プラットフォーム(例: Medscapeなど)には、結果がそのまま適用できない可能性がある。
倫理的な解釈の困難さ:
報酬を受けたこと自体が倫理的問題を示すとは限らず、報酬と執筆内容の関連性を断定できない。
これらの限界は、研究結果の解釈や適用に注意が必要であることを示しています。
Dr. bycomet