会社のカフェテリアにおけるランチメニューに、加糖、脂質、ナトリウムの量を示すトラフィックライトラベル(TLLs)を表示しても、食事内容の改善にはつながりませんでした。
【音声解説】
Traffic Light Labels and Dietary Behavior Change: A Randomized Clinical Trial
中国・上海の企業カフェテリアを利用する成人153人(平均年齢32.7歳、女性63.4%)
加糖、脂質、ナトリウム量に基づき、料理ごとに色分けされたTLLs(緑=推奨量以下、黄=平均摂取量と推奨量の間、赤=推奨上限超)を表示したランチ注文アプリの利用(n=76)
ラベルなしの通常メニューを提供した対照群(n=77)
主アウトカム:ランチにおける加糖、脂質、ナトリウムの摂取量
専用の食事注文アプリ(アプレット)を全参加者が使用。
このアプリは、注文時の料理情報と残食情報(食べ残しの割合)を基に、リアルタイムで摂取栄養素を自動算出する機能を備えている。
対象栄養素:加糖、脂質、ナトリウム(いずれもランチ1食あたり)
測定手順:
各料理には固定レシピ(分量入り)が設定されており、注文時に料理データが取得される。
食後、参加者はアプリ上で料理ごとの残食割合(例:50%残しなど)を自己申告。
残食を考慮して、実際の摂取量をアプリが自動計算。
食材データには中国食品成分表(Chinese Food Composition Table)が使用された。
各料理には加糖・脂質・ナトリウムの基準に基づいて緑・黄・赤ラベルが付与されている。
TLLスコアは以下のように数値化:
緑=1点、黄=2点、赤=3点
参加者がその日に摂取した全料理のスコアを平均化した値が「平均TLLスコア」となる。
スコアが高いほど不健康な選択と評価される。
緑(健康)・黄(中間)・赤(過剰)に分類された料理を何品選択したかを記録。
食事記録はすべてアプリで記録され、週単位で中央値を算出。
単位は「0.5料理」(0.5皿)単位でカウント(例:1.5皿分の緑料理など)。
解析対象はintention-to-treat(ITT)解析。
極端値の影響を減らすため、週ごとの中央値値(週中央値)を統計解析に使用。
欠測値がある場合は、多重代入法(MICE)により補完。
すべての料理は統一された分量で提供されており、分量差によるバイアスは最小限に制御。
料理の分類基準やカットオフ値(緑・黄・赤の基準)は補足資料(Supplement 2: eTable 1, eMethods 1)に明記されている。
この方法により、主観的な食事記憶への依存を排除し、客観的かつ即時的なアウトカム測定が可能となっている。
副次アウトカム:平均TLLスコア、緑・黄・赤の料理の摂取数
二群並行無作為化比較試験(RCT)
観察期間:12週間
加糖摂取量の群間差:−0.15g(95%信頼区間 −0.75~0.46g)
脂質摂取量の群間差:−1.54g(95%信頼区間 −6.13~3.05g)
ナトリウム摂取量の群間差:−116.12mg(95%信頼区間 −454.78~222.54mg)
平均TLLスコアの差:−0.05(95%信頼区間 −0.12~0.03)
緑ラベル料理の摂取オッズ比:1.15(95%信頼区間 0.99~1.32)
黄ラベル料理の摂取オッズ比:1.04(95%信頼区間 0.90~1.20)
赤ラベル料理の摂取オッズ比:0.84(95%信頼区間 0.57~1.23)
Liu H, Hu Z, Song Q, Xu J, Mai S, Zhu Z. Traffic Light Labels and Dietary Behavior Change: A Randomized Clinical Trial. JAMA Netw Open. 2025;8(5):e2510894. doi:10.1001/jamanetworkopen.2025.10894
中国では外食機会が増加しており、食生活における加糖・脂質・ナトリウムの過剰摂取が課題となっている。
トラフィックライトラベル(Traffic Light Labels, TLLs)は、食品の栄養情報を視覚的に伝えるコスト効果の高い介入手段として期待されている。
TLLsは、他の表示方式よりも健康的な食品選択の促進効果が高いとされている一方、実生活での効果は一貫せず限定的である。
ラボ実験と現場介入では効果サイズに大きな乖離があり、現場では期待されるほどの効果が確認されていない(例:効果が17分の1に減少した実例あり)。
TLLsの効果は、文化的背景、栄養リテラシー、調理習慣、人口特性などの影響を受ける可能性がある。
本研究の目的は、日常的なカフェテリア環境においてTLLsが食事摂取と選択行動に与える効果を検証することである。
本研究では、TLLsは加糖・脂質・ナトリウムの摂取量や料理選択において有意な改善を示さなかった。
先行研究と同様に、TLLsは認知や意図の改善には効果がある一方、実際の摂取行動の改善には乏しいことが示唆された。
TLLsの色分け表示は混乱を招く可能性があり、単純な警告ラベルの方が効果的という報告もある。
本研究では、TLLsは情報提供のみで、行動制限・教育支援などの補完的戦略がなかった点も効果が出なかった要因と考えられる。
TLLsの効果は**時間とともに低下する(ラベル疲れ)**傾向がある。
実用的で持続可能な効果を得るには、TLLsに教育や促進的介入を組み合わせる必要がある。
残食量が自己申告であったため、実際の摂取量との乖離がある可能性。
平日のランチのみが対象であり、朝食・夕食・週末の食事内容は評価対象外。
教育歴や社会経済的地位など、未測定の交絡因子の影響を完全に排除できない。
カフェテリアのメニューが限定的で、他の多様な食環境への一般化が難しい。
混合調味料に含まれる糖・脂質・塩分の正確な評価が困難で、摂取量が過小評価されている可能性がある。
総合的ハルシネーションリスク推定:1〜2%未満
すべての内容は、論文の該当ページ(p.2: 導入、pp.6–8: 考察・限界)に基づき、直接的な情報を要約して記載しています。
最もハルシネーションの可能性が高い部分:
→「TLLsの色分け表示は混乱を招く可能性があり、単純な警告ラベルの方が効果的という報告もある」
この点は論文内で引用されている他研究(レビュー)に基づいているが、必ずしも本研究の直接的なデータに基づく結果ではないため、わずかな解釈の幅があります。
Dr. bycomet