
素晴らしい音楽に出会ったとき、私たちは単に「音が良いから」という理由だけで心を動かされるわけではない。そこには、その音が鳴らされるまでの背景や、作り手の体温のようなものが必ず乗っている。
音楽作品には、作り手がどんな人間かという「スタイル」が、インクが紙に染み込むように、どうしても滲み出てしまうものだ。今日は、ファンとの関係を「消費」から「信頼」へと変える、人間性について書いてみたいと思う。
私たちはつい、音楽を作るときに「技術的な上手さ」や「今の流行り」を気にしてしまいがちだ。もちろん、クオリティを高める努力は尊いものだ。でも、聴き手が最終的にファンになり、長く応援したいと思う決め手は、そこではない。
ファンが見ているのは、もっと奥にあるものだ。
「この人はどう生きているか」
「何を大事にしているか」
「どんな痛みを乗り越えてきたか」
こうした「生き様」や「価値観」が楽曲の端々から見えたとき、その音楽は単なるエンターテインメントを超え、聴く人の人生に寄り添うものに変わる。
「ファンを喜ばせなきゃ」「誰かのために作らなきゃ」と気負う必要はない。むしろ、逆説的だが、徹底的に「自分のために」作るスタンスが、結果として他者との深い信頼を結ぶことがある。
ただし、そこには条件がある。それは、「一貫性」と「誠実さ」があることだ。
自分が本当に美しいと思うもの、心が震えるものを追求する姿。あるいは、自分の弱さや情けなささえも隠さずにさらけ出す「本音」。
「この人は、自分の心に嘘をついていない」
その態度が伝われば、たとえそれが個人的な歌であったとしても、聴き手はそこに自分自身を重ね合わせ、深い共感を覚える。
ファンサービスやマーケティング戦略として、相手に媚びたり、無理に何かを「与えよう」と力んだりする必要はない。作り手が自分を偽ってまで相手に合わせようとすると、敏感なファンはそれを「不自然さ」として感じ取ってしまうからだ。
自分に嘘をつかない態度そのものが、最大の「人間性」として伝わっていく。
あなたがあなたらしく、嘘偽りなくそこに在ること。その姿勢そのものが、言葉以上のメッセージとなって、ファンとの間に揺るぎない信頼関係を築いていくのだ。
もし今、あなたが「どう見られるか」を気にして迷っているなら、一度立ち止まって自分自身に問いかけてみて欲しい。
「今、自分は正直だろうか?」
その答えがイエスなら、あなたの音楽は間違いなく誰かの心に届く。技術で圧倒するよりも、人間性で握手をするような、そんな音楽活動を大切にしていこう。
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