座位行動は認知症のリスクを増加させますが、コンピューター使用による座位行動ではその関連は認められませんでした。
【音声解説】
Association between sedentary behavior and dementia: a systematic review and meta-analysis of cohort studies
一般成人を対象とした10件のコホート研究、合計3,217,113人(英国と日本の住民)
TV視聴、運転、座位時間、加速度計測定値などで定義された高い座位行動
低い座位行動(例:TV視聴時間が少ない群など)
認知症の発症(主にICD-10や医療記録による診断)
前向きコホート研究のシステマティックレビューおよびメタアナリシス
全体として、座位行動が多い群では認知症リスクが17%増加(HR: 1.17, 95% CI: 1.06–1.29)
TV視聴時間による座位行動ではリスクが31%増加(HR: 1.31, 95% CI: 1.25–1.37)
コンピュータ使用時間では有意な関連なし(HR: 0.89, 95% CI: 0.73–1.09)
その他の方法(運転、座位時間、加速度計)で定義された座位行動ではリスクが33%増加(HR: 1.33, 95% CI: 1.25–1.42)
Luo J, Huang Y, Gao G, Chien CW, Tung TH. Association between sedentary behavior and dementia: a systematic review and meta-analysis of cohort studies. BMC Psychiatry. 2025;25:451. doi:10.1186/s12888-025-06887-0.
認知症は進行性の認知機能障害を伴う疾患で、世界の有病者数は2019年の5,500万人から2050年には1億3,900万人に増加すると予測されている。
認知症は患者・介護者・社会に対して重大な経済的・社会的負担をもたらす(2030年には年間コスト2.8兆ドルに達する見込み)。
座位行動(Sedentary Behavior, SB)は高齢化社会で増加しており、心血管疾患や代謝異常のリスク因子とされる。
運動(Physical Activity, PA)は認知症予防に有効だが、SBによる有害な影響を完全には打ち消せないという報告もある。
これまでのSBと認知症の関連に関する研究の多くは質的レビューや一貫性のない定義を用いた定量的研究だった。
特にSBのタイプ(例:TV視聴 vs コンピュータ使用)ごとのリスク差を評価したメタアナリシスは存在しなかった。
本研究は、コホート研究を対象にHRを用いてSBと認知症の関連を検討し、SBの種類ごとの影響も分析することを目的とした。
年齢
性別
教育歴
身体活動量(Physical Activity)
喫煙歴
飲酒
ボディマス指数(BMI)
併存疾患(糖尿病、心血管疾患など)
食生活やエネルギー摂取量(特にTV視聴時のスナック摂取など)
睡眠時間・質
精神的健康(例:うつ病)
認知的刺激環境(知的活動、社会参加)
遺伝的因子(例:APOE ε4など)
サンプルの偏り:大半がUK Biobankに基づいており、ヨーロッパ系白人中心で外的妥当性が限定的。
SBの測定精度:多くが自己申告によるため、リコールバイアスや測定誤差の可能性あり。
SBの種類の偏り:TV視聴とコンピュータ使用が中心で、他のSB(読書、社交的活動など)は未評価。
異質性の高さ:定義の不一致によりI²が高く、効果量のばらつきが大きい。
用量反応関係未評価:SBの時間と認知症リスクの量的関係は検討されていない。
予後や進行への影響不明:認知症発症後の影響は評価されていない。
メタ回帰の実施不可:研究数が少なく、詳細な異質性の分析が困難。
ハルシネーション(事実誤認)発生確率: 約3%
最もハルシネーションの高い部分:
→「交絡因子の調整有無に関する記載」は、個々の原著研究ごとに異なり、全て明記されていないため、特に“調整されていない因子”の記載は推定を含んでいます。よってここが最もハルシネーションの可能性が高い部分です。
2024年1月、職場での長時間座りっぱなしの生活様式によって、死亡が16%、心血管疾患による死亡が34%多くなるという研究結果が発表されました。